最新記事

ブレグジット

英EU離脱の「勝者」はニューヨーク

2016年10月19日(水)18時13分
デービッド・フランシス

「離婚」の形が決まらず、金融機関はビジネスを見通せない

 理由の1つは規制にある。EUの巨大官僚機構が投資銀行業務をヨーロッパに移転させるための事務処理にうまく対応できるのかがはっきりしない。これは、国民投票前に金融業界がブレグジットに反対していた理由の1つでもある。

 現在、イギリスとEUとの「離婚」がどういう形になるかが決まっておらず、それゆえ金融機関も、イギリスやヨーロッパでのビジネスがどうなるかを見通せない。ニューヨークであれば、そんな心配とは無用だ。

 もう1つの理由は文化的なものだ。コンサルティング会社のZ/Yenグループが発表する世界金融センター指数(GFCI)によれば、ロンドンは金融業界で働く人が住みたい街ナンバー1である。2位はニューヨークだ。フランクフルトは19位、パリは29位と大きく差をつけられている。

 また、国民投票前にブレグジットへの賛否を表明しなかったシンクタンクのオープン・ヨーロッパは、金融機関にとってはヨーロッパ大陸よりも、ニューヨークやシンガポール、香港のほうが移転に望ましいとする報告書を17日に発表した。

 さらに理由を挙げれば、離脱によりイギリスは、商品やサービス、人の移動の自由が保障されたヨーロッパ単一市場へのアクセスを失う可能性がある。ドイツなど多くのEU構成国はアクセスを制限したいと考えているが、そうなればイギリスの金融機関にとって、5億人の消費者を抱える市場でのビジネスが困難になる。

 果たして、シティはどうなるのか。イギリスの中央銀行であるイングランド銀行のジョン・カンリフ副総裁は10月初旬、金融機関がアメリカに移転する可能性について聞かれ、端的にこう答えている。「ニューヨークに移る可能性があるか? もちろんだ。すでにニューヨークにあるのだから」

【参考記事】「ハードブレグジット」は大きな間違い?

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

国内企業物価、2月は前年比2.0%上昇 銅・金など

ビジネス

ペイペイ、米IPO価格は仮条件下限付近に 中東情勢

ワールド

IEA、過去最大の石油備蓄放出を提案 WSJ報道

ワールド

原油先物下落、IEAが過去最大の石油備蓄放出を提案
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中