最新記事

気候変動

地球の温度、過去12万年で最高──将来世代の負担増

2016年10月5日(水)17時40分
ルーシー・クラークビリングズ

mycola-iStock.

<元NASA研究員のジェームズ・ハンセンらが地球温暖化の報告書を発表。平均気温はかつてないほど上昇しており、対策は待ったなしにもかかわらず、国連内にさえ次世代に負担を押しつけようとする空気があると警鐘を鳴らす>

 地球の温度は今、過去11万5000年間でいちばん高くなっている。

 元NASA(米航空宇宙局)上級研究員の気候学者ジェームズ・ハンセンら12人の専門家が、「若者たちの負担――二酸化炭素排出削減の必要性」と題した報告書を発表した。報告書は、地球の平均気温がエーミアン間氷期と呼ばれる13万~11万5000年前と同程度にまで上昇したと主張。当時の海水面は今より数メートル高かった。

 その結果、これから数百年のうちに、氷河や氷床が解け、海水面の上昇により世界中の沿海部の都市が海に飲み込まれるという。

若者世代への負担押し付け

「若者たちが何とか祖先や親の行いを帳消しにする方法を見つけ出すだろうという思い込みが、国連の気候変動シナリオ分析に忍び寄っており、まるで癌のように広まっている」と、報告書は警鐘を鳴らす。

【参考記事】僕らの地球を救え!子供たちの公民権訴訟

 研究によれば、1975年頃に始まった急速な地球温暖化は、10年につき摂氏約0.18度のペースで今も続いている。人間の活動に起因する温室効果ガスが引き起こす温暖化は、過去10年で20%以上、進行の速度を増した。

 報告書はまた、地球規模で大量の化石燃料排出がこのまま続けば、若者たちへの負担が増し、大気中の二酸化炭素を取り除く「抽出技術」に着手しなければならなくなる、と述べる。

【参考記事】化石燃料を使わない時代へ ─ ただし日本以外では

 気候変動のリスクについては数十年も前から広く認識され、議論され続けてきたが、それでもまだ不十分だ。報告書は、今後100年間だけで104兆~570兆ドルが気候変動との闘いに必要だと主張する。

 ハンセンらの報告書は、学術誌アース・システムズ・ダイナミクスにディスカッション・ペーパー(報告論文)として提出された。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中