最新記事

イギリス

英中「黄金時代」に暗雲、中国が投資する英原発計画の承認延期で

2016年8月15日(月)10時35分

 8月9日、メイ英首相が総工費約2兆4000億円の原子力発電所建設プロジェクトの計画承認を延期したことを受けて、中国は英国が中国資本への門戸を閉ざすことに抗議し、両国関係が重大な岐路にさしかかっていると警告。写真は2012年、英ブリッジウォーターにあるヒンクリーポイントB原発のタービンホールにあるスタートとストップボタン(2016年 ロイター/Suzanne Plunkett)

 メイ英首相が総工費240億ドル(約2兆4000億円)の原子力発電所建設プロジェクトの計画承認を延期したことを受けて、中国は英国が中国資本への門戸を閉ざすことに抗議し、両国関係が重大な岐路にさしかかっていると警告した。

 英国では数十年ぶりとなる原子力発電所新設を見直すというメイ首相の意外な決定に対し、中国はこれまでで最も厳しい警告を発した格好だ。ロンドン駐在の中国大使は、フランスと中国による建設計画をメイ首相が承認しなければ、英国は電力不足に直面するだろうと述べた。

 英フィナンシャルタイムズ(FT)紙は、「英中関係は、重要な歴史的局面にある。相互の信頼をよりいっそう重視していくべきだ」という劉暁明・駐英大使の発言を伝えている。

「私は、英国が中国に対する門戸開放を維持し、英国政府がヒンクリー・ポイント(原発建設プロジェクト)を今後も支持し続けること、そして可及的速やかに同プロジェクトがスムーズに進行するよう、承認を決定することを希望している」

大使のコメントは、メイ首相による計画承認の延期に対する中国政府の苛立ちを示すものだ。延期決定は、6月23日の国民投票における欧州連合(EU)離脱決定を受けた政治的混乱のなかで権力を獲得して以来、メイ首相が行った最も衝撃的な企業社会への介入である。

 メイ首相の決定は、中国からの投資に対する警戒心の高まりと、そしてオランド仏大統領をはじめとするEU加盟国首脳に対しても強硬な姿勢をとる同首相の意志を示唆している。

 英中関係の新たな「黄金時代」を彩る象徴的なプロジェクトと位置付けられたヒンクリー原発への出資協定は、昨年の習近平国家主席の訪英時に、ダウニング街の英首相官邸で調印されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中