最新記事

サイエンス

ゲリラ豪雨を育てるミクロの粒子

2016年7月12日(火)16時00分
ゾーイ・シュランガー

Jason Persoff Stormdoctor-Cultura Exclusive/GETTY IMAGES

<地球規模で猛威を振るう豪雨だが、最新研究で原因の1つが排ガスや火山灰などのエアロゾル粒子にあると判明>

 今年もゲリラ豪雨が不安な季節が近づいてきた。6月に発行された米国科学アカデミー紀要(PNAS)によれば、雨雲が強大化する背景にはどうやら「エアロゾル粒子」が関係しているらしい。

 エアロゾル粒子とは、大気中に浮遊する微粒子のこと。排ガスや火山灰や砂嵐が放出するちり、大気汚染の元凶として話題のPM2・5もこれに含まれる。

 雲はエアロゾル粒子の周囲に水滴が付着することで発生する。ざっくり説明するならば、エアロゾル粒子が多ければ多いほど、雨粒になって落下するまでの雲の寿命は延びる。雲は多くのエアロゾル粒子に支えられて水蒸気をため込み、より強大な雨雲に成長する。

 その結果として激しい豪雨が降ることを、テキサス大学とコロラド大学ボールダー校、NASAのジェット推進研究所の共同研究チームが突き止めた。

【参考記事】サイボーグ「エイ」が生物と機械の境界を越える

 論文によれば、大気中におけるエアロゾル粒子の含有量が暴風雨の強大化につながるという仮説が立証されたのは、今回が初めてだ。

 エアロゾル粒子と雨雲の間の因果関係は「以前から取り沙汰されてきた」と、研究チームは論じる。「だがエアロゾル粒子の増加が地球全体でも地域規模でも、暴風雨の強度に影響を及ぼすことはこれまで知られていなかった」

水不足解消の切り札に?

 その影響は大きい。研究チームは2430例に及ぶ「メソ対流系」の衛星データを調査した。「メソ対流系」とは、とりわけ熱帯地域で洪水を引き起こしやすいレベルの豪雨を降らせる降水のメカニズムだ。

 彼らは、大気にエアロゾル粒子が多く含まれると、現地の気象条件によって雨雲の寿命が3~24時間延びる可能性があることを発見。雲の寿命が延びれば、最終的に降雨量は多くなる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

主要行の決算に注目、政府閉鎖でデータ不足の中=今週

ワールド

中国、レアアース規制報復巡り米を「偽善的」と非難 

ワールド

カタール政府職員が自動車事故で死亡、エジプトで=大

ワールド

米高裁、シカゴでの州兵配備認めず 地裁の一時差し止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリカを「一人負け」の道に導く...中国は大笑い
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 9
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 10
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中