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過激化しテロ組織へ走る10代、なぜ社会は止められなかったのか?

2016年6月13日(月)20時25分

 米国では、セントルイス郊外のファーガソンで非武装の黒人ティーンエイジャーが白人警官に射殺された事件をめぐる、抗議行動や暴動の発生が報道の中心だった。アミンはこうつぶやいている。「アラーがファーガソンで正しいジハードを呼び掛け、人々をイスラムに導きますように」

 アミンは2014年、「欧米諸国で育ち、人々の心情を理解し、雄弁ではあるがイスラム的な意味で知識の豊かな代弁者をイスラム国は必要としている」と書いている。彼のアカウントは現在停止されている。ロイターは、SITEインテリジェンスグループから彼のツイートのスクリーンショットの提供を受けた。

 同年8月、アミンは次のようにツイートしている。「ISには欠点もある。しかしISが目に入った非ムスリム全員の首を斬っているなどと主張するなら、そこで議論は終わってしまう」

プログラムの欠如

 同年の秋、アミンの両親は再び息子がネット上で困った活動を行っていることに気づいた。マジッド氏のアドバイスに従い、彼らはアミンのことをFBIに通報した。母親は裁判官に対し、FBIが息子をISから守ってくれることを期待した、と書いている。

「私たちはこのアドバイスに従った。この判断が、息子に対する捜査や起訴へとつながった」と母親は書いている。「息子が海外に行かなかったことを嬉しく思う反面、逮捕されることに一役買ってしまったことで、非常に混乱し、悩んでいる」

アミンは最初に捜査官の取り調べを受けたときに、罪状を告白している。アミンとその両親は、その後約4回にわたってFBIの捜査官と会っている。弁護士が裁判所に提出した書類によれば、逮捕後も、アミンは他のIS支持者に対する捜査に協力的であるという。

 6月の罪状認否の際に、アミンは学校の友人であったニクネジャドを過激主義に誘ったこと、彼とISの連絡員を引き合わせ、シリアに渡航できるように空港まで付き添ったことを認めている。裁判所の記録によれば、ニクネジャドはシリアでISの戦闘員になったという。

 米国の法執行機関当局者は、未確認の情報としながらも、ニクネジャドがイラクかシリアで死亡した可能性があると述べている。彼の母親は、家族が悲嘆に暮れていると書いている。「そして、レザ1人が過激化の犠牲者ではない」

アミンは懲役11年、その後も生涯にわたって監視下に置かれるという刑を宣告された。彼の弁護士ジョゼフ・フラッド氏によれば、2016年4月の時点では何の過激主義矯正プログラムも受けていないという。

「宗教教育、過激主義矯正プログラム、脱過激主義サービス、その他どんな介入プログラムにも接していない。もちろん、彼個人の状況に即した対応を受けてない」とフラッド氏は書いている。「連邦刑務局には、現状、そうしたプログラムが決定的に欠けている」

 連邦刑務局では、テロ関連も含め、どの受刑者に対しても矯正プログラム、釈放準備に関して同一のアプローチを適用しているという。

 現在18歳のアミンの釈放予定は2025年だ。

 (Yasmeen Abutaleb記者、Kristina Cooke記者、翻訳:エァクレーレン)

[マナッサス(バージニア州 6日 ロイター]


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