最新記事

中国経済

シャドーバンキングへの依存強める中国の斜陽産業

国有企業なら当局が救済してくれる時代は過ぎ去った

2016年5月26日(木)19時34分

5月25日、中国では、激しい逆風にさらされている産業が基盤を置く一部地域で、銀行の企業に対する貸出態度が厳しさを増し、これらの企業はいわゆる「影の銀行」に再び依存するしかない状況に追い込まれている。河北省で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

 中国では、激しい逆風にさらされている産業が基盤を置く一部地域で、銀行の企業に対する貸出態度が厳しさを増し、これらの企業はいわゆる「影の銀行(シャドーバンキング)」に再び依存するしかない状況に追い込まれている──。ロイターが人民銀行(中央銀行)の統計を分析したところ、こうした構図が浮かび上がってきた。

 影の銀行は2014年に野放図な拡大を懸念した中国当局からいったん締め付けを受けた。しかし鉄鋼や石炭などが盛んないくつかの省では、足元でまた企業が伝統的な銀行よりもずっと高い金利で影の銀行から借り入れる傾向が鮮明だ。例えば重工業が活発な遼寧省においては、第1・四半期の影の銀行からの企業借入額は前年同期比で2000%を超える増加となった。同省内の資金調達額全体は前年同期から1%しか増えていない中で、調達先別で影の銀行の比重が19%を占めている。

 上海のある資産運用会社のディレクターは「経済のしくみがきちんとしており、とりわけ地方債市場を大いに利用できる地域は、影の銀行への回帰度合いはそれほど大きくない。だがより経済規模が小さく、貧しい地域は事情が異なる」と述べた。

 米国風には「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼べる地域で影の銀行からの借り入れが再度急増したのは、伝統的な銀行が長年培ってきた考え方を放棄していることの表れだ。つまり、国有企業(SOE)への融資は、地元政府がほぼ間違いなく救済してくれるのでリスクフリーとみなせるという認識は、捨て去られつつある。

 過去半年間で増え続けた社債のデフォルト(債務不履行)はSOEで、その多くは旧来型の産業に属している。

 またデフォルトの増加は、政府がこうした産業の過剰設備を整理しようとする取り組みの裏返しでもある。ただ、これらの産業に対する影の銀行の融資が裏付けとなる「理財商品」を個人投資家が購入することで、社債市場から個人投資家へとリスクの背負い手が移り変わるリスクが増大している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上

ワールド

シンガポール航空機かバンコクに緊急着陸、乱気流で乗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中