最新記事

中朝関係

金正恩氏が党委員長に――中国、ほとんど無視

2016年5月10日(火)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

朝鮮労働党の党大会で党委員長に選ばれた金正恩 Kyodo/via REUTERS

 5月9日、日本時間午後7時のNHKニュースの最後の方で金正恩氏が党委員長に選出されたと速報で伝えていたとき、中国のCCTVはロシアの戦勝記念日閲兵式を報道していた。8時(中国時間7時)のCCTVニュースでは?

北朝鮮に関する日本の報道と中国の報道の扱いの違い

 北朝鮮の朝鮮労働党第7回党大会の報道に関して、あまりに中国での扱いが小さいものだから、いっそのこと同時比較をしようと思って、中国の中央テレビ局CCTVと日本のNHKのニュースとを比較してみた。

 すると5月9日午後7時のNHKニュースでは、冒頭に北朝鮮のニュースを報道し、7時半に終わるニュースの最後に近づいたころに速報で「朝鮮労働党大会で、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が、新たに設けられたポストの党委員長に選出されました」という趣旨の内容を伝えた(録音していたわけではないので、微妙な表現の違いがあったらお許しいただきたい)。

 同時間に、実はCCTVを観ていたのだが、そのとき(中国時間の6時半近く)CCTVではロシアにおける戦勝71周年記念の報道をしていて、動画付きで華々しく閲兵式を映し出していた。その後、北朝鮮に関して少し触れたので、ハッとして注意してみたところ、なんとイギリスのBBCの記者が「報道内容が不適切だ」という理由で拘束されたというニュースを一瞬だけして、ニュースは終わった。

 BBCの記者のニュースはNHKの7時のニュースの冒頭部分でもしていたが、「報道内容が不適切だという理由で記者が拘束された」ことを、中国共産党宣伝部の検閲が入っているCCTVが報道するのかと、やや唖然としながらCCTVを観た。

 いよいよ8時になり、CCTVの(中国時間)7時の全国ニュースである「新聞聯播」が始まったので、一秒たりとも見逃すまじと食い入るように観たのだが、なんと報道しないではないか。そう思っていたところ、ニュースが終わる3分ほど前に「映像ナシで!」、金正恩が党委員長になったことと政治局常務委員5名(うち一人は金正恩)の名前が低いモノトーンの声で告げられた。その間、わずか40秒間ほど。そのすぐ後に2分間以上を使ってモスクワにおける閲兵式の動画が華やかな音楽とともに流れ、アナウンサーの声も「やや高らかに」はずんでいた。

「ここまでやるのか」というほどの徹底ぶりだ!

「核保有国」を宣言した北朝鮮の存在など、消してしまいたいと言わんばかりの無視のしようではないか――。

 それに比べて北朝鮮に関する日本の報道は実に熱い。NHKの9時のニュースでは、冒頭10分間ほどかけて、専門家まで呼んで解説し、中国との対比が印象的だった。(日本のテレビのスイッチを入れるのが少し遅かったので、もし冒頭からでなかったら、これもまたお許しいただきたい。)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

発送停止や値上げ、中国小口輸入免税撤廃で対応に追わ

ワールド

独製造業PMI、4月改定48.4 22年8月以来の

ビジネス

仏ラクタリスのフォンテラ資産買収計画、豪州が非公式

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで29人負傷、ロシア軍が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中