最新記事

日中関係

日中首脳会談開催に向けて――岸田外相と王毅外相および李克強首相との会談を読み解く

2016年5月2日(月)12時00分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

4月30日に中南海で会談した岸田外相と李克強首相 Jason Lee-REUTERS

 4月30日、岸田外相は午前中に王外相と午後は李首相と会談した。王外相が日中関係悪化の原因は日本側にあるなどとしたのに対し、李首相はやや対等だった。会談の目的は日中首脳会談開催にあり、中国側の姿勢を読み解く。

王毅外相の「上から目線」――日本は歴史を直視せよ!

 岸田外相は中国の王毅外相の招聘に応じて、4月29日から5月1日まで中国を正式訪問した。4月27日、中国の外交部報道官が「宣布」という言葉を使って表明した。国際会議以外で日本の外相が中国側の正式招聘を受けて訪中するのは4年半ぶり。それも日本側の要請により、ようやく実現した形だ。

 中国側は最初から「日本があまりに強く希望するので、仕方ないから受け入れてやる」という姿勢だった。

 29日に北京入りした岸田外相は、30日午前に北京にある釣魚台の国賓館で王毅外相と会談した。

 そのときの写真を見ていただいても分かるように、王毅外相は「笑ってはならない」とばかりに、ニコリともせず「厳粛な表情」を保ち続けている。

 挨拶の冒頭に熊本地震への見舞いの言葉は述べたものの、それ以降はひたすら「上から目線の言葉」を岸田外相に投げ続けた。動画(の一部)をご覧になりたい方はこれをクリックしてみていただきたい。王毅外相が岸田外相に言った言葉を列挙してみよう。( )内は筆者。

●ここ数年来、中日関係は絶えず紆余曲折して波乱が多く、低迷状態に陥ってきたが、その原因がどこにあるか、日本は自分でよく分かっているだろう。(日本が歴史を直視しないことが原因だと非難し、安保関連法案・南シナ海問題に関するアメリカとの同調など指していることになる。)

●日本は両国関係を改善したいという希望を提起し、あなた(岸田外相)も第一歩を踏み出したいと言っているが、もしあなたが本気で真心から誠意を示すならば、われわれは歓迎する。

●中日両国は隣国で、われわれも日本と安定的で健全な友好関係を保ちたいとは思っている。しかしこの関係は必ず「歴史を直視する」という基礎の下に築かれなければならない。日本はその約束を厳守するという基礎の下で協力的な両国関係を打ち立てるべきで、対抗という基礎の下に両国関係を構築しようと思ってはならない。

●中国には「聴其言、観其行(その言葉を聞くだけでなく、その行いをも観察しなければならない)」という古い言葉がある。

●私は今日、あなたがどのようにして日中関係を改善しようと思っているのかを聞く用意があるが、しかし日本側が本当に行動の上でも実行するのか否かを観察していきたい。

 と、まあ、こんな具合だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EBRD、今年の成長見通しを上方修正 関税が脅威

ビジネス

8月百貨店売上高、7カ月ぶりプラス インバウンドの

ワールド

トランプ政権、グリーンエネ補助金130億ドル中止へ

ワールド

アップル、EUデジタル市場法を批判 「新機能遅延・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
特集:ハーバードが学ぶ日本企業
2025年9月30日号(9/24発売)

トヨタ、楽天、総合商社、虎屋......名門経営大学院が日本企業を重視する理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 2
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 3
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市場、売上を伸ばす老舗ブランドの戦略は?
  • 4
    【クイズ】ハーバード大学ではない...アメリカの「大…
  • 5
    クールジャパン戦略は破綻したのか
  • 6
    週にたった1回の「抹茶」で入院することに...米女性…
  • 7
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 8
    トランプの支持率さらに低下──関税が最大の足かせ、…
  • 9
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 10
    9月23日に大量の隕石が地球に接近していた...NASAは…
  • 1
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 2
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 5
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがた…
  • 6
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 7
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...…
  • 8
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 9
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 10
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中