最新記事

シリア

トルコ外相「米軍はいっそISISの腕章をすればいい」

2016年5月31日(火)18時45分
シボーン・オグレイディ

Rodi Said-REUTERS

<シリアでISISと勇猛に戦っているクルド人武装組織YPGは有志連合の敵か味方か? 米軍特殊部隊が軍服にYPGの記章を付けていたことで、ことは一気に外交問題に> 写真はYPG戦闘員

 シリアに展開する米軍特殊部隊の兵士が、ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)掃討作戦で米軍と共闘するクルド人武装組織の記章をつけていたことがわかり、トルコ政府が猛反発している。トルコの外相は27日、今度から米兵はISISの旗を腕章に加えればよいと皮肉った。

 国内にクルド人の分離独立問題を抱えるトルコ政府は、隣国シリアのクルド民兵組織「人民防衛隊(YPG)」もテロ組織と見なしている。トルコのメブリュト・チャブシオール外相は会見で、「トルコの同盟国であり共にテロと戦う決意を表明している米軍の兵士が、テロ組織であるYPGの記章を着用するのは断じて受け入れられない」と怒りを露わにした。

「米兵は、シリアの他の地域で作戦を展開するときはISISやヌスラ戦線、アルカイダの記章、アフリカならイスラム過激派ボコ・ハラムの記章を着用するのか」

連帯を示す意味も

 YPGはISISと果敢に地上戦を戦っており米軍は頼りにしているが、トルコ政府はこれを国内でテロ組織指定しているクルド労働者党(PKK)の一派とみなしている。米政府はYPGがPKKと同じテロ組織だというトルコ政府の主張を否定してきた。

【参考記事】アメリカがトルコのクルド人空爆を容認

 今回明らかになった写真には、ISISが首都とするシリア北部ラッカ近郊で警備中の米特殊部隊の兵士がYPGの記章を着用している様子が写っていた。チャブシオール外相は会見で、昨年10月以降アンカラの中心部で発生した3度の爆弾テロのうち、2度はYPGの仕業だと語った。

【参考記事】クルド人「独立宣言」がシリアの新たな火種に

 中東に展開するアメリカ特殊作戦軍報道官のティファニー・ボーウェン少佐は取材に対し、米兵がYPGの記章を身につけることは米軍規定に反することを認めた。

 一方で、「米特殊部隊と行動を共にする部隊が、信頼関係を築くため互いの記章を着用することは珍しくない」と説明。部隊間の協力関係を示すことを目的に、アフガニスタンやイラク、ヨルダンの前線でも行われてきたと語った。

 米国防省報道官のスティーブ・ウォーレン大佐はこの問題について「不適切な行為であり、部隊にはYPGの記章を取り外すよう指示があった」とコメントした。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

アングル:「暑さは人を殺す」、エネルギー補助削減で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 10
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中