最新記事

感染症

ジカ熱は小頭症の原因とCDCが断定

2016年4月14日(木)15時34分
ジェシカ・ファーガー

 4月13日に発行されたイギリスの医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルには、CDCの解析結果を補強する論文が掲載されている。ブラジル北東部のペルナンブコ州で昨年7月から12月に生まれた小頭症の新生児23人の脳をCTとMRIで調べたものだ。

 検査の結果、脳へのダメージは「極めて重い」ことがわかった。また血液検査の結果から、先天性障害を引き起こしうる他の要因(トキソプラズマ症、サイトメガロウイルス、風疹、梅毒、HIV)がないことも確認された。

 CT検査では脳組織の石灰化が確認され、妊娠中のある時期にジカウイルスが胎児の脳の細胞を殺し、その部分に傷ができて石灰が沈着したのではないかと、研究チームはみている。体の動きを制御する小脳と脳と脊髄をつなぐ脳幹にも発育不全が認められた。

先天性ジカウイルス症候群

 脳の容積の縮小と脳内の腔の拡大に加え、一部の新生児では脳の皮質の形成不全が認められた。ミエリン(髄鞘)形成不全が疑われるケースもあった。ミエリンは導線を覆うビニールのように神経細胞の軸索を覆う膜で、神経細胞間の信号伝達をスムーズにする役目を果たしている。ミエリンが十分に形成されていないと情報伝達がうまくいかない可能性がある。

 この研究は疫学的な研究ではないが、CTとMRIで観察された病変は他の症例研究とも一致するものだ。研究チームはCDCと同様、小頭症は「氷山の一角」ではないかと結論付けている。多くの医師が臨床経験に基づいて指摘しているように、ジカウイルスは胎児にさまざまな障害を引き起こす。今ブラジルで猛威を振るっているのは単に小頭症を引き起こすジカ熱ではなく、「先天性ジカウイルス症候群」と言うべきものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン革命防衛隊司令官が死亡、イスラエルの攻撃で=

ワールド

イラン参謀総長や核科学者、攻撃で死亡の可能性高い=

ワールド

イスラエルのイラン攻撃、事態の悪化防ぐべくあらゆる

ワールド

イスラエルがイランに先制攻撃、核開発阻止狙い 数日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 6
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 7
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 8
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 9
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 10
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中