最新記事

テロ

ブリュッセルが鳴らすサイバーテロへの警鐘

2016年4月6日(水)13時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

 ハッカーは、偽メールにウイルスを仕込んだりしてパスワードなどを盗み、個人アカウントを乗っ取っていた。いわゆる「スペアフィッシング」と言われる手口だ。筆者の取材に元国防総省関係者は、「中国人やロシア人がよく使うやり口だ」と語る。「目的は、原子力についての情報を盗み、自らの核開発に利用したいということもあるし、有事に向けて"敵国"の国内にある攻撃対象についての情報を収集する意味合いもあるだろう」

 サイバー攻撃によって原子力施設が破壊行為を受けるというシナリオは、すでに現実になっている。アメリカはイスラエルと協力してスタックスネットというマルウェアを作り、2009年にイランの核燃料施設にサイバー攻撃を仕掛けた。米政府の極秘作戦「オリンピックゲーム」と呼ばれるこのサイバー攻撃は、遠隔操作でウランを濃縮する遠心分離機を破壊している。今から7年前の時点ですでに、こうした攻撃は実行可能だった。

 インフラを狙った攻撃は、原子力施設以外でも多数起きている。今回のベルギーテロを受け、EUテロ対策主席調査官であるジル・デケルコブ氏は3月26日、ベルギーのメディアに対して「今後5年以内にインターネットを使ったインフラ攻撃が行われても驚きはしない」と語っている。原子力施設のみならず、エネルギー関連施設、飛行機や鉄道といった交通インフラもサイバー攻撃テロの標的になる可能性があると指摘する。「原子力発電所やダム、航空管制や鉄道開閉所などをコントロールするスキャダ(監視・制御システム)に侵入されるという形になるだろう」

 3月24日、アメリカの司法省は、イラン国内にいるイラン人コンピューター専門家7人を起訴したと発表した。イランで国軍とは別に存在する軍事組織、イラン革命防衛隊との密接な関係が指摘されているこの7人は、アメリカのインフラに対してサイバー攻撃を行っていた。

 ロレッタ・リンチ司法長官は記者会見を開いて、この7人は2013年にニューヨーク州にあるボウマン・ダムのスキャダ(監視・制御システム)にサイバー攻撃で不法に侵入したと説明した。イラン政府の後ろ盾があるイラン人ハッカーらが、ダムのシステムを遠隔操作で乗っ取ろうとしたのだ。このダムは決して規模は大きくないが、ダムがテロの標的となる事態は市民にとっても脅威だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ自動車輸出、1─9月に約14%減 トランプ関

ワールド

CBS、エルサルバドル刑務所の調査報道を直前延期 

ビジネス

首都圏マンション、11月発売戸数14.4%減 東京

ビジネス

中国、少額の延滞個人債務を信用記録から削除へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中