最新記事

日本銀行

黒田日銀、金融政策は据え置き、物価2%達成時期を先送り

熊本地震における被災地の金融機関を対象に金利ゼロ%の支援オペレーションも決定

2016年4月29日(金)12時59分

4月28日、日銀は金融政策決定会合で、物価が目標とする2%に達する時期を先送りする一方、現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)の据え置きを決めた。写真は日銀本店の前を歩く人々。3月に撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

 日銀は28日の金融政策決定会合で、物価が目標とする2%に達する時期を先送りする一方、現行のマイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)の据え置きを決めた。熊本地震の被災地の金融機関に対する総額3000億円の支援オペを導入する。

 日銀はこれまで、物価2%目標の達成時期を「2017年度前半ごろ」と見込んでいたが、同日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で「2017年度中」に先送りした。経済・物価の先行きについても「下振れリスクが大きい」との見解を示した。

 一方、金融政策は、マネタリーベースを年間80兆円増加させる市場調節方針を維持。長期国債や上場投資信託(ETF)などの資産買入額、当座預金残高の一部に適用している0.1%のマイナス金利幅もそれぞれ据え置いた。

 9人の政策委員のうち、マネタリーベース目標と資産買入方針について木内登英審議委員が反対。マイナス金利には佐藤健裕委員と木内委員が反対票を投じた。

 会合では、熊本地震における被災地の金融機関を対象に、復旧・復興に向けた資金需要に対応するため、被災地金融機関支援オペレーションの導入を全員一致で決めた。貸し付け総額は3000億円で、金利はゼロ%。貸付残高の2倍が当座預金残高のゼロ%適用となり、マイナス金利の対象にはならない。

 展望リポートでは、物価動向に関して「賃金の上昇を伴いつつ、物価上昇率が緩やかに高まっていくメカニズムは着実に作用している」と指摘。もっとも、これまでの賃金の改善程度は鈍いとし、「労働分配率も低下傾向を続けている点には留意する必要がある」との見解を示している。

 先行きの金融政策運営について、2%の物価安定目標の実現に必要な場合は「量・質・金利の3つの次元で追加的な金融緩和措置を講じる」との方針をあらためて示した。

 (伊藤純夫 竹本能文)

[東京 28日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、シリア南部で政府軍攻撃 ドルーズ派保護

ビジネス

独ZEW景気期待指数、7月は52.7へ上昇 予想上

ビジネス

日産が追浜工場の生産終了へ、湘南への委託も 今後の

ビジネス

リオ・ティント、鉄鉱石部門トップのトロット氏がCE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中