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いざとなれば、中朝戦争も――創設したロケット軍に立ちはだかるTHAAD

2016年2月22日(月)17時10分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 このような最悪の道を待つくらいなら、いっそのこと中国側から中朝軍事同盟を破棄してでも北朝鮮を攻撃し、中朝戦争を起こす選択もないわけではない。

「1979年の中越戦争を思い出してみてほしい。ベトナムに学習させたら、今ではおとなしくなり、中国の言うことを聞くようになったではないか」

 いったい中国はどうするつもりなのかと、しつこく詰め寄る筆者に、中国政府関係者は苦しげに声を落とした。社会主義国家同士が戦争をした方が、痛手は少ないという意味だ。この場合には、米国には絶対に参戦させないのだという。

軍事大改革による「ロケット軍」創設――もう一つの目的

 本コラムで何度か取り上げたように、中国は建国以来(もっとさかのぼれば、1927年における中国共産党の紅軍創設以来)の軍事大規模改革を断行した。

【参考記事】人民解放軍を骨抜きにする習近平の軍事制度改革

 それまでの軍区を戦区に切り替えて即戦力を高め、中央軍事委員会に直接の指揮権を持たせたものだが、中でも「ロケット軍」という軍種を創設したのは重要だ。

 習近平・中央軍事委員会主席は軍種の創設大会で、「(米軍などを想定した)敵対勢力による核(核弾頭搭載可能な弾道ミサイル)の脅威から中国を守るのだ」という趣旨のことを述べた。これはロケット軍創設の目的が、海底(原子力潜水艦)から天空(核弾頭搭載弾道ミサイル)までを包括的に掌握する立体的な核戦力掌握を目的とすると同時に、韓国にTHAADを配備した場合の日米韓安全保障協力への対抗策でもあることを見逃してはならない。

 2014年3月15日、「中央軍事委員会深化国防と軍隊改革領導小組(指導グループ)」が誕生し、習近平・中央軍事委員会主席が組長に就任したが、その半年ほど前の2013年10月に韓国が米国に対してTHAADに関する情報提供を要請している。

 2014年6月30日付けの本コラム<習近平「訪韓」優先、その心は?――北朝鮮への見せしめ>にも書いたように、中国建国以来の慣例を破って中国の国家主席が北朝鮮よりも先に韓国を訪問したのは「中国の言うことを聞かない北朝鮮への見せしめ」という意味合いが強かったが、もう一つの目的が潜んでいた。
それはTHAADを韓国に配備することを思いとどまるようにパククネ大統領を説得することだったと、聞いている。

 このタイミングに合わせて中韓首脳会談が韓国で行なわれたことは、THAADとの関連性を十分に示唆している。

 一方、習近平政権が誕生すると、朴槿恵(パククネ)大統領は激しい媚中外交を始め、2013年6月27日(〜30日)に訪中した時には韓国の独立運動家・安重根(アン・ジュングン)が伊藤博文を暗殺した中国黒竜江省のハルビン駅に石碑を建てる計画を習近平国家主席に提案しているほどだ。パククネ大統領の父親・朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が親日であったことから、自分が親日売国奴と罵倒されないようにするための方便であっただろう。

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