最新記事

インタビュー

事業に必要な人を口説き落とせる、それが本当のリーダーシップ

2016年2月26日(金)17時36分
WORKSIGHT

wsHomedoor_6.jpg

課題を設定して解決を図る逆算思考を重層的に組み合わせていく

 どんな事業も思いがけない展開を見せたり試行錯誤の連続だったりしますけど、社会構造を変えたいという課題をまず的確に理解した上で、その解決のために何をすべきかという逆算思考は大切にしています。

【参考記事】世界人口の半分と同じ富が62人の富豪に集中

 そこから導き出されたのが「出口作り」「入口封じ」「啓発」という事業の3本柱なんです。計画を前提に、何ができるか、何が近道かを考える。私たちの場合は、その上でさらに問題と問題を掛け合わせていきます。ホームレス問題の解決だけでなく、HUBchariだったら自転車問題も解決できるし、HUBgasa(ハブガサ)*** ならビニール傘が年間1億3,000万本消費されるという廃棄物問題や環境問題も射程に入れることができる。こういう発想が問題の根本的な解決、社会イノベーションにつながるように思います。

人と人とのつながりの中で自然と信頼が獲得できた

 ただ、私たちはイノベーションや社会貢献はあまり意識していなくて、路上生活から脱出するときの選択肢を幅広く提供することを一番大切にしています。選択肢が多くあった方が響くものがあると思うんですね。路上脱出のきっかけになるものは千差万別で、どこにその人のスイッチがあるかは一概に言えませんから。

 例えば、あるおっちゃんはぼさぼさの長髪を無造作に結んでいて、面接時の印象がよくないから髪を切ったほうがいいと言っても、かたくなに切らなかったんです。あるとき、その人とホームレスの啓発活動の一環で愛媛へ講演に行ったら、おっちゃんはその足でお墓参りに向かったんですね。

 おっちゃんはかつて車いすの女の子の登下校をボランティアで手伝っていたのですが、その子がおっちゃんの結んだ髪を「しっぽ」と触って遊んでいたそうです。その子が亡くなって初めてお墓参りが叶って、墓前で髪を切ることを報告できた。そこでようやくおっちゃんは髪を切ることを自分に許したんでしょう。愛媛から帰ってすぐ散髪して、就職活動を経て仕事を見つけられました。そういうケースもあるんです。

 もちろんHUBchariやHUBgasaのような中間的就労の場の提供が功を奏するケースも多くありますが、いずれにしろ一方的な押し付けで自立を促すのではなくて、おっちゃんたちに寄り添いながら自立を見守っていきたいと思っています。そういう心掛けで、人と人とのつながりの中で自然と地域での信頼も獲得できてきたという感じでしょうか。今は梅田のおっちゃんたちはほとんど私たちのことを知ってくれています。1人ひとりと誠実に向き合ったら、それが伝播していくのだと思います。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中