最新記事

中東

空爆だけではISISはつぶせない

2015年12月16日(水)17時00分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

 イラクとシリアで米軍の作戦を指揮するのが、06年にイラク戦争の流れを変えたショーン・マクファーランド中将だという点は見逃せない。あのときカギとなったのは、アンバル州のスンニ派部族を説得して、アルカイダ内の急進的なスンニ派との協力関係に終止符を打たせ、米軍と共にアルカイダに対抗するよう仕向けたことだ。

 マクファーランドは今、同じ作戦を遂行しようとしている。ISISに対抗する同盟相手として手を組もうとしているのは、アルカイダのイラク支部にいたイラク人兵士たちだ。

 重要な作戦になるかもしれない。ラマディが要衝だからというだけではない。スンニ派の民兵とシーア派主体のイラク軍が協力して勝利すれば、シーア派が多数を占めるイラクにスンニ派にとってより公正な政治を実現する土台となる可能性がある。これは、イラク全土のスンニ派の保護者を自負するISISをたたきつぶすには必要な条件だ。

 地上部隊がISISに勝利する道を切り開けるなら、空軍の存在は重要であり不可欠だ。そしてISISに反対するアラブ人とイスラム教徒がもたらす地上戦での勝利は、この地域からISISを追い出し、他の地域にいる急進的なイスラム教徒がこの組織に魅力を感じないようにするために重要なことだ。

 勝利は、有志連合の空軍力なしに達成できない。しかし地元の優れた兵士を結集した地上軍の協力がなければ、空軍力はほとんど役に立たない。

© 2015, Slate

[2015年12月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の衛星打ち上げ、国連決議の「あからさまな違反

ワールド

ラファ避難民密集地区攻撃、死者45人 イスラエルは

ワールド

ポーランド、ロシア外交官の移動を制限へ ロシアは報

ワールド

北朝鮮、衛星打ち上げに失敗 通告期間内の挑発行為に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 2

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 6

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 7

    台湾を威嚇する中国になぜかべったり、国民党は共産…

  • 8

    トランプ&米共和党、「捕まえて殺す」流儀への謎の執…

  • 9

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中