最新記事

人口政策

一人っ子政策ついに廃止でも変われない中国

形骸化している政策を今さら転換しても、少子高齢化の流れは止まらない

2015年11月6日(金)17時00分
シャノン・ティエジー

抜け穴も 2人目が欲しい家庭には、既に2人目がいる可能性が高い Kim Kyung-Hoon-REUTERS

 中国が30年以上にわたって続けてきた一人っ子政策をついに廃止する。共産党が党中央委員会第5回全体会議(5中全会)で決定したもので、これからはすべての夫婦が2人目の子供を持てるようになる。国営の新華社通信によれば、目的は「人口推移のバランスを取り、高齢化問題に取り組むため」だという。

 この方針転換の政治的メッセージは大きい。国内外の専門家が人口動態に関する危機を予測していたにもかかわらず、中国政府は一人っ子政策の廃止に乗り気でなかった。この政策がカネのなる木でもあったからだ。

 政府は関連手数料という名の違反者からの罰金を年間で30億ドル以上徴収してきた。だが、この数字は控えめなものかもしれない。ある中国人弁護士の分析によると、13年には31行政区中23の行政区だけで31億ドルもの罰金が徴収されているからだ。

 この驚くべき数字は、一方で別の現実をも物語っている。これほど大勢の人たちが一人っ子政策を無視しているということだ。2人(あるいは3人や4人)の子供を持つことは罰金を払う余裕がある家庭や、罰金を回避できると確信している家庭には常に選択肢としてあった。

 実際のところ、一人っ子政策は今や例外と抜け穴だらけ。既に多くの夫婦には2人目の子供を持つことが認められている。例えば、少数民族や農村在住者、どちらかの親が一人っ子である場合などだ。長子が障害児だったり、一部の省では長子が女児だった場合も2人目を持つことができる。

 さらに罰金が歯止めとなるはずのこの政策は富裕層には通用しなかった。しかも2億7000万人以上いる国内移民は転居を繰り返すことが多く、当局の管理から逃れてきた。

 要するに、中国で2人目の子供を希望した家庭には、既に2人目がいる可能性が高いということだ。一人っ子政策が緩和された13年、人口統計学者らは2人目を持つ資格が新たに認められる夫婦は1000万~2000万組いるだろうと予測した。しかし、今年の5月時点で許可を申請した夫婦は150万組以下にとどまっている。

「二人っ子」にスライドしただけ

 一人っ子政策を完全廃止しても、中国でベビーブームが起こる可能性は低いだろう。根本的な問題は、家族計画に関する中国政府の姿勢ではなく、社会の変化にある。

 世界中の政府と同じように、中国政府も気付いている。都会的な生活を送り、教育レベルが高い市民は概して、大家族を作りたいと思わないということに。中国の合計特殊出生率は13年で1.67人とかなり低く、一人っ子政策を完全撤廃しても解消されることはないだろう。同政策についての著書もあるジャーナリストのメイ・フォンが指摘するように、多くの中国人女性は、出産すれば必死で手にしたキャリアを棒に振ることになると考えているからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

経済・物価見通し実現なら引き続き政策金利引き上げ、

ワールド

中国、3年以内にポスト量子暗号に関する国家標準策定

ワールド

iPhone数億台に侵入可能なマルウエア、ウクライ

ワールド

米副大統領、近くハンガリー訪問へ 選挙控えるオルバ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 3
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 4
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 10
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中