最新記事

テロ

パリ同時テロは、ISISの軍事的弱体化のしるし

ISIS is not an Existential Threat

パリを攻撃したのは「自国」内での支持を維持するためだ

2015年11月16日(月)17時24分
エマニュエル・カラギアニス

強者連合 ISISは欧米に勝ち目はない Stephanie Keith-REUTERS

 先週のパリ同時多発テロは、120人以上の犠牲者を出しただけではない。我々が知る「テロ」の概念が終わったことを示している。イスラム過激派がヨーロッパの一般市民を標的にしたテロはこれまでに何度もあった。しかし今回のように、連続攻撃によって無数の市民が殺害されたのは初めてだ。

 2002年にモスクワの劇場でチェチェンの武装勢力が観客を人質に取った事件は、こうした無差別テロの最初の事件として分類できる。ただこの事件では、死亡した人質のほとんどの死因はロシア政府軍の特殊部隊が使用した「無力化ガス」によるものだった。

 多くの専門家や政府関係者は、今回のテロを、過激派組織ISISが支配地域を越えて世界中でテロ攻撃を実行できるグローバルな組織に変貌した証しだと解釈するだろう。確かに新しいISISを、国際テロ組織アルカイダの前例に照らして見ることは可能だ。

4つの核保有国を相手に

 ただISISが中東以外の国でのテロに関与したのはこれが初めてではない。今年6月、チュニジアのリゾートビーチでISIS傘下の戦闘員が、欧米の観光客を中心に39人を銃撃して殺害した。アルカイダと対照的にISISはこれまで、中東のスンニ派国家の支配階層に標的を絞ってきた。

 ISISによる新たな「聖戦」は、アルカイダのそれよりはるかに狭い。ISISの目的は領土の獲得だ。現地に精通し、強固な決意と高い意欲を持つ戦闘員がそろった武装勢力でなければ達成できない。

 実のところ、今回の同時多発テロは、そんなISISの弱さと焦りを表している。レストランやコンサートホールを攻撃したのは、警備の堅い「ハード」な標的への攻撃能力が不足しているからだ。組織的な連続攻撃とは裏腹に、ISISは実は軍事的に追い込まれている。

 ISISに対抗する同盟勢力には、今や4つの核保有国(アメリカ、ロシア、フランス、イギリス)が加わり、トルコ、イランという中東の2つの大国も名を連ねている。

 ISISはその領土を失い、そしてこれからさらに失う情勢にある。指導層が「攻撃は最大の防御」という戦略に手を伸ばしたのはそのためだ。

 ISIS指導層には高等教育を受けた欧米出身者が含まれている。市民をテロの標的にすればその効果が高いことをよくわかっている。04年にスペインのマドリッドで発生した列車爆破テロでは、世論が外交政策を動かした。犠牲は約200人にのぼり、スペイン政府はイラク派兵からの撤退を決めた。これはアルカイダにとっては予想外の勝利で、ISISのような後発の武装勢力もこれに学んだ。

ニュース速報

ワールド

ロイター企業調査:貿易紛争は4割に影響、日米FTA

ワールド

アングル:北朝鮮、未完成の核兵力容認し実験停止 対

ビジネス

日経平均は続落、米ハイテク株安と為替の円安とが綱引

ビジネス

世界的な貿易戦争、経済にマイナス=SF地区連銀総裁

MAGAZINE

特集:技能実習生残酷物語

2018-4・24号(4/17発売)

アジアの若者に技術を伝え、労働力不足を解消する制度がなぜ「ブラック現場」を生むようになったのか

人気ランキング

  • 1

    中国市場依存のドイツが味わう「ゆでガエル」の恐怖

  • 2

    「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

  • 3

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた53歳上の女性とは

  • 4

    空自F2後継機、米ローキードがF22・35ベースの開発打…

  • 5

    対北朝鮮融和に一直線、韓国文政権の「検閲」が始ま…

  • 6

    こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機…

  • 7

    世界で50年ロングセラーのバッグが、なぜ今の日本人…

  • 8

    「ヒトラーが南米逃亡に使った」はずのナチス高性能…

  • 9

    韓国で後を絶たないパワハラ事件 SNSでさらに表面化

  • 10

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 1

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた53歳上の女性とは

  • 2

    こんなエコノミーは嫌だ! 合理的すぎる座席で、機内はまるで満員電車?

  • 3

    「何かがおかしい...」国のやり方を疑い始めた北朝鮮の人々

  • 4

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 5

    「ヒトラーが南米逃亡に使った」はずのナチス高性能…

  • 6

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 7

    地球外生命が存在しにくい理由が明らかに――やはり、…

  • 8

    金正恩は「裏切り」にあったか......脱北者をめぐる…

  • 9

    ジェット旅客機の死亡事故ゼロ:空の旅を安全にした…

  • 10

    アマゾン・エコーが、英会話の練習相手になってくれた

  • 1

    日本の空港スタッフのショッキングな動画が拡散

  • 2

    ユーチューブ銃撃事件の犯人の奇妙な素顔 「ビーガン、ボディビルダー、動物の権利活動家」 

  • 3

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 4

    「金正恩を倒せ!」落書き事件続発に北朝鮮が大慌て

  • 5

    金正恩が習近平の前で大人しくなった...「必死のメモ…

  • 6

    「僕はゲイリー19歳、妻は72歳」 青年が恋に落ちた5…

  • 7

    ヒトの器官で最大の器官が新たに発見される

  • 8

    「パスタは食べても太らない」──カナダ研究

  • 9

    2度見するしかない ハマってしまった動物たちの異様…

  • 10

    ポルノ女優がトランプとの不倫を暴露──脅されながら…

グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ 日本再発見 シーズン2
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

SPECIAL ISSUE 丸ごと1冊 プーチン

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年4月
  • 2018年3月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月