最新記事

北欧

スウェーデン極右の「物乞い排除」広告、撤去へ

地下鉄に貼り出された移民排斥の政治広告に抗議が殺到

2015年8月7日(金)17時27分
フェリシティ・ケーポン

外国人向け? 物乞いが迷惑をかけてすみません、などと書いた広告 Bertil Ericson/TT News-REUTERS

 スウェーデンの首都ストックホルムの地下鉄構内に最近掲示された、「物乞い排除」を呼び掛ける政治広告について、交通公社が撤去することを決めた。あまりに露骨なスローガンに対して約1000人の反対派が抗議行動に出たためだ。

 問題となった政治広告を仕掛けたのは、移民反対を政策として掲げる、極右野党のスウェーデン民主党。広告の文言は、海外からの観光客に向けて、物乞いが引き起こす「迷惑」を謝罪する内容だった。

 市中心部にある地下鉄「エステルマルム広場」駅のエスカレーターの天井には、「スウェーデンでご迷惑をかけて申し訳ありません」と英語で書かかれていた。

「強引な物乞いが深刻な問題になっています! 国際的なブローカーが金と引き替えに送り込んできた移民たちです。スウェーデン政府は必要な対策を講じません。しかし我々はやります。――我々はスウェーデン民主党! 2018年の見違えるようなスウェーデンに、またお越しください!」。2018年は、スウェーデンの次の総選挙の年だ。

 また別の広告では、通りで寝ているホームレスの写真の上に「スウェーデンはこれよりもっとましなはずだ」というスローガンが大書されている。

 これに対して今週、激しい抗議の声が上がった。英インディペンデント紙によると、1000人を超える反対派の人たちがストックホルム中心部の広場で集会を開き、一部の活動家が地下鉄の駅になだれ込んで広告を引き剥がした。これまでに2人が逮捕されている。

「抗議行動でほとんどの広告は剥がされた」と、交通公社の広報担当者イェスパー・ペターソンは本誌の取材に語った。「今後民主党の広告は掲示しない。天井のスローガンを剥がそうとした人がエスカレーターによじ登るケースがあり、危険が生じたからだ。まったくの安全管理上の判断だ」

 ペターソンはさらに、公社では広告がこれほど激しい抗議を受けるとは予想しておらず、そもそもこの広告を掲示するかどうかの判断は「表現の自由」の問題だ、と話している。「1つの政党の広告を掲示したら、すべての政党の広告も掲示しなければならない」

 抗議行動を組織した活動家は、地元のニュースサイトで心境を語った。「地下鉄がこんな人種差別主義者のスローガンを貼りだしたことがショックだった。(物乞いは)掃除しなければならないゴミ、とでも言わんばかりだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日米合意、法的拘束力のある国際約束ではない=赤沢再

ビジネス

午前の日経平均は続落、米景気懸念で一時4万円割れ 

ワールド

ロシア、8月にガソリン不足の可能性 輸出禁止でも=

ワールド

ゴールドマン、ブレント原油見通し据え置き 振れ幅リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザベス女王の「表情の違い」が大きな話題に
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 5
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 6
    ハムストリングスは「体重」を求めていた...神が「脚…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 9
    すでに日英は事実上の「同盟関係」にある...イギリス…
  • 10
    自分を追い抜いた選手の頭を「バトンで殴打」...起訴…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 6
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 7
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 8
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中