最新記事

アジア

永田町にも欲しい? 賄賂を見分ける新アプリ

腐敗が蔓延するインドネシアで、汚職をめぐる意識改革を起こす「秘密兵器」が登場

2015年2月2日(月)12時35分
マリー・デュミエール

これって賄賂? 昨年秋に発表されたスマホ用の汚職撲滅ゲーム Komisi Pemberantasan Korupsi-KPK

 あなたは政府機関で働く公務員で、コンピューターの購入を担当している。いくつかのメーカーに入札を呼び掛けると、ある会社の営業担当者が「このたびはお世話になります」と、人気ブランドの最新型ノートパソコンを持ってきた。悪い人じゃなさそうだし、取りあえずもらっておこうか......。

 すると突然、画面上にロボットが現れ、「この件が公になってもいいか」と尋ねてきた。「ノー」と答えると、ロボットは不機嫌そうに「誠実さを失ってはならない」と告げた。

 画面上? そう、これは汚職撲滅を目指すインドネシア当局が作成したスマートフォン向けゲームアプリの一コマだ。

 インドネシアでは、業務上の見返りを期待して金品を贈ったり、それを受け取ったりする行為が贈収賄という犯罪であるという認識が十分浸透していない。国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナルが発表している「腐敗認識指数」は、175カ国中107位。

「公共事業の受注や営業免許の許認可をめぐって汚職が蔓延している」と、同団体のジャカルタ支部のワヒュディは語る。賄賂を贈らずに事業を立ち上げることはほぼ不可能で、公務員や政治家の側から金品を要求するケースも多い。

 そこで、汚職の捜査・起訴を担う汚職撲滅委員会(KPK)は昨年秋、贈賄に関する学習アプリを発表。テーマパークを舞台としたこのアプリは、クイズやグラフを駆使して、どんな贈り物が賄賂に当たるのかを啓蒙する内容となっている。「贈り主を捕まえろ」と題されたゲームや、賄賂かもしれないプレゼントを受け取るべきか否かを判断するゲームもある。

クリーンな現政権が主導

 このアプリがもっと早く世に出ていれば、スマトラ島リアウ州のアナス・マアムン知事が罪を犯すこともなかったかもしれない。彼は森林の開発許可と引き換えにパーム油製造企業から20億ルピア(16万6000ドル)を受け取った容疑で、昨年9月にKPKに逮捕された(わずか半年前に、前任者が似たような罪で懲役14年の判決を受けているのだが)。

 大統領直轄の組織として主に大物政治家の不正を糾弾してきたKPKは、国民から圧倒的な支持を得ている。02年の設立以来、逮捕者は既に400人近く。昨年5月には、メッカ巡礼の公的資金を不正流用した容疑で宗教相を告発し、9月にはエネルギー相を横領などの容疑で捜査すると発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ビジネス

NY外為市場=円・スイスフラン上げ幅縮小、イランが

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中