最新記事

ナイジェリア

ボコ・ハラム2000人虐殺の恐怖

テロリストたちは、灌木に逃げ込んだ住民を執拗に追いかけ殺戮した

2015年1月15日(木)16時43分
エリン・コンウェイスミス

 ナイジェリア北東部の国境地帯に位置するバガは年明け早々から、自動小銃やグルネードランチャー(擲弾発射装置)で武装したイスラム過激派ボコ・ハラムの猛攻を受け、町のほぼ全域が焼き払われた。

 バガはチャド湖に臨む漁業の町。ボコ・ハラム対策のために設置されたナイジェリア、ニジェール、チャドの合同部隊が駐留する基地があり、過去にもボコ・ハラムの攻撃を受けてきた。イスラム法による支配を目指すボコ・ハラムは2009年以降、新指導者の下で過激化し、各地でテロを繰り返してきたが、今回の攻撃は犠牲者数で過去最大規模のものだと、ナイジェリア政府軍は認めている。死者は数百人から最大2000人にのぼるとみられ、さらに数千人の避難民が発生した。

 ナイジェリア政府は、来月14日に実施される大統領選挙の準備に追われ、今のところバガ攻撃について公式なコメントを発表していない。

 住民に対して残虐極まりない攻撃が行われたのは、この地域の自警団が政府軍側についたことに対する報復とみられる。バガ周辺には今も多数の遺体が散乱している模様だ。

 バガが位置する北東部ボルノ州の州都マイドゥグリまで逃れた生存者たちが今、虐殺の模様を語り始めている。それによれば、虐殺が始まったのは1月3日。ボコ・ハラムが熾烈な銃撃戦の末に合同部隊を撤退させ、基地を制圧してからだ。基地を拠点にしたボコ・ハラムはその後何日にもわたってバガとその周辺の村々を繰り返し襲撃した。

 ボコ・ハラムは「ほとんどあらゆる方向からバガの町になだれ込み、無差別に発砲し、住民を殺しまくった」と、25歳のトラック運転手イブラヒム・ガムボは地元紙に語った。「他の人たちと一緒に無我夢中で逃げた」

 ボコ・ハラムの戦闘員は小型トラックやオートバイで町に入り、灌木地帯に逃げた人々を追いかけて射殺した。犠牲者の多くは、逃げ遅れた女性や子供だった。家に隠れていた人たちは、家ごと焼かれたと伝えられている。

 カヌーで湖を渡り、隣国チャドに逃げた人たちもいる。泳いで渡ろうとした人たちの一部は溺死した。湖の中程にある島にざっと1000人がたどり着き、飢えと寒さに耐えていると、国連の難民救援スタッフが報告している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、米の入国禁止令を非難 「底深い敵意示してい

ワールド

エルサルバドルに誤送還の男が米に帰国、不法移民移送

ワールド

米連邦高裁、AP通信への取材制限認める 連邦地裁判

ビジネス

中国外貨準備、5月末時点で3.285兆ドル 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全な場所」に涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 5
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 6
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「銀」の産出量が多い国はどこ?
  • 9
    ディズニーの大幅な人員削減に広がる「歓喜の声」...…
  • 10
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっしり...「これ何?」と写真投稿、正体が判明
  • 4
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中