最新記事

ミャンマー

この程度の民主化なら国名をビルマに戻せ

野党のスー・チーを大統領選から締め出し、少数民族の弾圧を続けるこの国が民主国家か

2014年12月12日(金)12時32分
ルーク・ハント

軍事独裁? 経済成長率は高いが民主化が伴わない(ヤンゴン) Lam Yik Fei-Bloomberg/Getty Images

 先月のASEAN首脳会議で、オバマ米大統領はミャンマー(ビルマ)のテイン・セイン大統領に改革推進を求めた。だが改革は本当に進むだろうか。

 野党のアウン・サン・スー・チー党首が次期大統領選に立候補できる可能性は、ほぼ閉ざされてしまった。米企業は対ミャンマー経済制裁を嫌って、シンガポールに拠点を置いている。

 この2年間に国を追われた西部のロヒンギャ族(イスラム教徒の少数民族)は10万人以上に上る。10月半ばからだけでも1万5000人を超えている。

 長年にわたり政権側と戦ってきた北部の少数民族カチン族との停戦合意は、成立した途端に政府軍の攻撃でほごになった。交渉担当者によれば、停戦交渉再開のめどは立っていない。

 一方、来年の大統領選に出馬予定のトゥラ・シュエ・マン下院議長によれば、子供たちが外国籍であることを理由にスー・チーの大統領就任を禁じる条項と、軍部に拒否権を与える条項に関する憲法改正は、新議会が招集された後に議論するそうだ。

 つまり5月の国民投票で憲法改正が支持されても、それが有効になるのは次の総選挙後ということ。スー・チーを大統領選から締め出せば、トゥラ・シュエ・マンが当選する確率は高まる。「慌てて改憲して失敗するほどの余裕はない」と彼は言う。

 まるで、その前に行われていたオバマとスー・チーの会見をあざ笑うかのようではないか。オバマはスー・チーの出馬禁止を「意味がない」とし、スー・チーは改革には「ちょっと問題がある」と言っていたのだ。

 また、ミャンマーの市場開放は違法な、あるいは違法性が疑われるビジネスの正当化に利用されただけとの批判がある。ミャンマーを第2の北朝鮮にしたくない──そんな一心の欧米が承認してくれたおかげで、軍関係者は軍服をスーツに着替えるだけで、半世紀にわたる軍部独裁の間にため込んだ富と特権を手放さずに済んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相との会談「普通のこと」、台湾代表 中国批判

ワールド

米韓制服組トップ、地域安保「複雑で不安定」 米長官

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中