最新記事

パレスチナ

水増し? ガザ復興支援で得をするのはだれか

超豪華ホテルで発表した巨額支援は「見せ掛け」。実際に資金が使われるかどうかは不透明だ

2014年10月23日(木)15時38分
ローラ・ディーン

支援は急務 ガザ地区はイスラエル軍から50日間の猛攻を受けた Mohammed Salem-Reuters

 エジプトの首都カイロの郊外にあるJWマリオットは1泊210〜600ドルもする最高級ホテル。普段は静かなロビーが、この日ばかりは大混雑だった。大勢の警備員が目を光らし、若いスタッフが忙しそうに駆け回る。思いがけずトニー・ブレア元英首相や潘基文(バン・キムン)国連事務総長と鉢合わせした人もいるに違いない。

 この時、豪華過ぎるこのホテルでは、イスラエル軍の50日間に及んだ猛攻撃で破壊されたパレスチナ自治区ガザの復興費用を調達するため、70以上の国・地域や国際機関が参加する国際会議が開かれていた。

 会議は先々週末、総額54億ドルの拠出を発表。パレスチナ自治政府が要請していた40億ドルを大幅に上回る金額だ。

 だが数字にだまされてはいけない。よくあることだが、会議で決まった金額は巧みな算術によって積み上げられた見せ掛けの数字にすぎない。

 そもそも、54億ドルのすべてがガザ復興に投じられるわけではない。この金額には、多くの国が毎年拠出しているパレスチナ支援金も含まれている。

「注意深く(会議の)名称を読むといい」とエジプト駐在ノルウェー大使トール・ウェンスランドは言う。「パレスチナに関するカイロ会議・ガザ復興」という包括的な名称は、パレスチナの他の地区のために既に約束済みの資金を紛れ込ませるのに好都合。発表された54億ドルのうちガザ復興費は24億〜27億ドル程度。しかも、そのうちどれだけが新規の援助かも分からない。

 例えば、アメリカが発表したパレスチナへの援助金は4億1400万ドルだが、夏以降で少なくとも1億1800万ドルが既に使われており、ガザ復興に充てる新規の援助は7500万ドルしかない。

国際社会は約束を破る

 たとえ拠出が約束されても、それを実行させるのがまたひと苦労だ。例えば10年のハイチ地震の後には53億ドルの援助が約束された。だが半年過ぎても2%しか支払われていなかった。

 昨年のシリア人道支援会議もそうだ。4カ月後の時点で拠出実績を調べたら、1億ドルを約束したカタールは270万ドル、7800万ドルを約束したサウジアラビアは2160万ドルだったという。今年1月の時点でも、会議で決まった総額15億ドルの約7割しか実行されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、米国の半導体関税巡り台湾と協力の余地=通商交

ワールド

カナダとインド、貿易交渉再開で合意 外交対立で中断

ワールド

ハマス代表団、エジプト情報機関トップと会談 イスラ

ワールド

ブラジル前大統領を拘束、足首の監視装置破損で逃亡の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中