最新記事

領土問題

インドにも「侵入」を繰り返す中国

実効支配地域の認識は食い違うが、現状維持では一致する矛盾を突く中国

2014年8月20日(水)14時15分
ミシェル・フロルクルス

及び腰 中国軍が国境を越えてきても黙認するインド政府には国内から反発も Adnan Abidi-Reuters

 インドがパキスタンと67年に渡って領有権を争うカシミール地方をめぐって、中国との間でも緊張が高まっている。インド軍当局によると、中印間で領有権を争う東部ラダックに、中国軍が部隊を派遣したという。

 インドの地元紙タイムズ・オブ・インディアによると、中国人民解放軍の部隊は、インド国境を越えてカシミール地方内部に25〜30キロ侵入した。現地時間の今週初め、インド側の警備兵が中国軍の兵士が高地に向かって進んでいるのを発見した。両軍の兵士は接触したが、中国軍の兵士は現地から撤退することを拒否。インド軍の兵士は、新たに設定された軍事規則に従って基地に戻り、そこで上官に報告したという。

 ラダックは標高5200メートルを超える高地にある山岳部の辺境地帯で、インドと中国の兵士が昨年も3週間にわたるにらみ合いを続けたことがある。

 インドの英字紙DNAは、インドの軍高官と広報官は両軍の間にいかなる衝突も起きていないと否定した、と報じている。両国の実効支配線(LAC)の定義があいまいなために混乱が起きているのだという。インドと中国は、お互いが主張するLACが食い違っていることは公式に認めているが、同時に現状を変えないことでも一致している。

 それにも関わらず、両国はしばしば相手の「侵入」を非難し合っている。インド軍の広報官は、「それぞれが自国のLACの認識に従って警備するので『侵入』が発生する」と説明した。

 今回、中国軍の「侵入」があったかどうかは議論が分かれるが、インドの政治家は国境警備の強化を主張している。「中国軍はラダックに25キロも侵入しているのに、インド政府は、中国軍は中国側の解釈によるLACまで警備に来ただけだと正当化している」と、インド野党・国民会議派のマニッシュ・テワリは政府を非難した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正(発表者側の修正)東京コアCPI、11月は+2

ビジネス

英自動車生産、10月は前年比23.8%減 ジャガー

ワールド

香港大規模火災の死者94人に、鎮火は28日夜の見通

ビジネス

小売販売額10月は前年比1.7%増、PCなど家電増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中