最新記事

中国軍事

中国は超大国と張り合わず

2014年4月21日(月)12時51分
ハリー・カジアニス(ナショナル・インタレスト誌副編集長)

的を絞って目標を達成

 だが、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を争う日本は別だ。日本の海上自衛隊はアジア最強クラス。戦闘スキル、訓練、兵器の技術水準から日中の海軍力を比べるなら、日本に軍配が上がる。

 しかし中国のミサイル保有数と精度の向上、新型の対艦弾道ミサイル(ASBM)の導入を考慮すると、ミサイル戦になった場合は予断を許さない。中国は第5世代戦闘機の導入と艦船の保有数増加に的を絞って国防費を増やしているから、将来的には日本は海軍力で中国に優位を保つことが困難になるだろう。

 そこで問題になるのが大物同士の力比べだ。米中の軍備比較が無意味だとは言わない。だが、東シナ海の今後を考えるなら、見落としてはならない事実がある。中国は軍備でアメリカに拮抗する必要がないということだ。

 少なくとも今のところ中国は「第1列島線」周辺の防衛にはるかに強い関心を持っている。片や、アメリカは地球規模で超大国の責務を果たそうとしている。2国の軍隊のミッションはまったく違うのだ。

 だからこそ、盛んに論じられている中国の戦略、つまり米軍の介入に対抗するA2ADが重要なのだ。周辺海域で紛争が起きたときに、介入してくる米軍を無力化すること。それが中国の狙いだ。

 多数の船から成る攻撃部隊、空母打撃群を複数保有するには膨大なコストが掛かるが、その必要はない。巡洋艦と弾道ミサイル、従来型の潜水艦、機雷、その他比較的低コストの兵器が多数あれば、目的を果たせる。中国にとってはそれで十分だ。

 2つの国の軍事力を正確に比べるのはそう簡単ではない。だが、ある国の軍隊の能力を判定するのは簡単だ。その国の指導層が掲げる目標、そして軍隊自体が設定した目標を達成できるかどうか──それだけだ。

 残念ながら、それを論じても読者の興味をかき立てる記事にはならない。それでも、現在と今後の中国の軍事力で重要なのは目標達成能力のほうだ。

From thediplomat.com

[2014年3月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀利上げでも円安、残る「介入カ

ビジネス

米国株式市場=上昇、幅広い銘柄に買い ハイテク株高

ワールド

ベネズエラ原油輸出減速、米のタンカー拿捕受け シェ

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで上昇、日本当局が円安けん
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中