最新記事

エネルギー

ウクライナが招くドイツのエネルギー危機

クリミア問題を受けてロシアへのエネルギー依存を見直すメルケル政権だが、脱原発と同時に進めるのは危険

2014年4月14日(月)12時56分
ジョシュア・キーティング

やむを得ず? ドイツの石炭消費は90年以降で最高水準に達している Ina Fassbender-Reuters

 エネルギー消費では欧州で1位、世界で7位のドイツが、政治的理由からエネルギー不足に見舞われる恐れがある。

 G7諸国は先週、今回のクリミア危機を受けて、ロシアへのエネルギー依存を見直す方針で一致した。だがいくら情勢が緊迫しても、ロシアが輸出収入の14%を占める欧州へのエネルギー供給をやめるとは考えにくい。

 石油と天然ガスの3分の1をロシアに頼るドイツのような国は、依存度を減らしたほうが長期的な対ロ政策には好都合に思える。だがこうした国では、依存解消後の方策に問題がある。

 ドイツは脱原発を唱える数少ない国の1つ。残り9基の原発を22年までに段階的に廃炉し、50年までに電力の80%を再生可能エネルギーで賄う計画だ。

 一方でドイツの石炭消費は昨年、90年以降で最高水準に達した。従来の方法で採掘可能な天然ガスに恵まれないため、水圧破砕によるシェールガス採掘を提唱する声もあるが、政府は環境保護の立場から反対している。

 エネルギーの対ロ依存を減らし、脱原発を目指し、再生可能エネルギーへ転換するという方針は素晴らしいが、一度に進めるのは大いに問題がありそうだ。

© 2014, Slate

[2014年4月 8日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のデジタル人民元、26年から利子付きに 国営放

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、11月は3.3%上昇 約3年

ワールド

ロ、ウ軍のプーチン氏公邸攻撃試みを非難 ゼレンスキ

ワールド

ウクライナ「和平望むならドンバス撤収必要」=ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中