最新記事

インドネシア

ライオンが首をつるジャワ島「死の動物園」

インドネシアで最古かつ最大のスラバヤ動物園で100頭以上の動物が不審死を遂げている

2014年3月27日(木)14時52分
マリー・デュミエール

一見のどかだが 動物の相次ぐ不審死の裏では何が行われているのか(スラバヤ動物園) Sigit Pamungkas-Reuters

 ジャワ島北東部にあるスラバヤ動物園が世界的に知られているのは、インドネシア最古かつ最大の動物園だからではない。希少な動物が多いからでもない。動物が次々と不審死を遂げているからだ。

 今年1月、1歳半のライオンがワイヤで首をつった状態で死んでいるのが見つかった。ヌーとコモドオオトカゲは胃の不調で、シロイワヤギは仲間同士のけんかで死んだ。ホエジカも死に、ベンガルトラは治療中だ。

 動物園によれば、昨年7月以降に死んだ動物は100頭以上に上る。世界中から非難が殺到し、閉園を求めるオンライン署名は20万人分に達した。メディアは園を「死の動物園」「インドネシアの恥」と呼ぶ。

 それでも園の経営陣は気にしていない。死んだ動物の数は「許容範囲内」「普通」だと主張、不祥事を認めようとはしない。それどころか近い将来、さらに80頭が老化や病気で死ぬとの見込みを発表した。

 ラトナ・アユングルム園長に至っては、動物たちの死は自業自得だとほのめかした。一部の動物は活発過ぎたりけんかをしたりと、自らの過ちのせいで死んだと述べた。

 インドネシア第2の都市スラバヤに動物園ができたのは、オランダ統治時代の1916年のこと。今ではスマトラトラやボルネオオランウータンなどの絶滅危惧種を含む約3500頭が飼育されている。 

 園内は劣悪な環境だと、専門家も来園者も口をそろえる。不潔で動物は適切な世話をされず、狭い檻にすし詰め状態。トラやラクダは骨と皮にやせ細り、ゾウの足は鎖でつながれている。

サーカスと動物園を混同

 経営権をめぐる争いが何年も続いた後、園は昨年7月にスラバヤ市の管轄となった。状況は改善していると、広報のアグス・スパンカットは言う。理事会と職員を再編し、助成金も出るようになった。「施設に手を入れ、50の檻を新設する。川の水を動物に飲ませるのもやめた」と、彼は説明する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

日本と関税巡り「率直かつ建設的」に協議=米財務省

ワールド

再送トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措

ビジネス

FRB金利据え置き継続の公算、PCEが消費の慎重姿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中