最新記事

ベネズエラ

政府が商品を差し押さえて勝手に安売りの強引経済政策

50%超えのインフレ対策は──軍に家電量販店を占拠させ強制バーゲン

2013年11月12日(火)15時54分
ギリッシュ・グプタ

買い遅れるな カラカスのダカ店には長蛇の列が Carlos Garcia Rawlins-Reuters

 野党はアメリカと結託してわが国に「経済戦争」を仕掛けている──そう主張するベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領が先週、軍に家電量販店を占拠させ、国民に政府が決めた「公正」価格での購入を呼び掛けた。

 軍の標的となったのは、ベネズエラの家電量販チェーン店であるダカ、KVG、クラッシュで、これらの店舗は大混乱に陥った。当局は5人の店長を拘束し、不当に値段を吊り上げた罪で起訴するつもりだ。

 何千人もの群衆が安くなったプラズマTVや冷蔵庫、洗濯機などを買おうと、店の前で行列をつくった。また中部の都市バレンシアのダカ店では市民による略奪が起き、5人を拘束したと政府は発表した。

 だが識者の間では、これは12月の地方選挙を目前に控えた政府が人気取りのために仕掛けた略奪行為だと、非難の声も上がっている。「店の陳列棚にも倉庫にも何も残してはならない! すべては国のためだ」と国民に呼びかけたのは、マドゥロだからだ。

 ベネズエラ経済は悪化している。年間のインフレ率は54.3%、米ドルの深刻な不足から闇市場ではドル紙幣が原価の10倍近い値で取引されている。ドル不足は、トイレットペーパーや鶏肉、料理用油などの生活必需品や食品類の品切れにつながっている。

 その結果、ウゴ・チャベス前大統領の死を受けて4月に大統領に就任したマドゥロの支持率は急落。来月の地方選は、新大統領の指導力に対する信任投票になるだろうと、予想されている。

洗濯機が1週間で100%値上げ?

 政府を批判する人たちは、経済が瀕死状態に陥っているのは、資本逃避(キャピタルフライト)防止策としてチャベス政権下の10年前から始まった為替管理政策のせいだと非難する。一方の政府は、それは野党が米政府の支援を得て仕掛けている「経済戦争」だと主張する。

 マドゥロは11月10日夜、食品や自動車についても「公正」な価格が約束されるよう、今週中に軍を出動させると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

25・26年度の成長率見通し下方修正、通商政策の不

ビジネス

午前のドルは143円半ばに上昇、日銀が金融政策の現

ワールド

米地裁、法廷侮辱罪でアップルの捜査要請 決済巡る命

ビジネス

三井物産、26年3月期は14%減益見込む 市場予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 3
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中