最新記事

貿易

中国とEU「ワイン摩擦」の勝者は誰か

中国産太陽光パネルへの反ダンピング課税に対する報復で、中国はEU産ワインのダンピング調査を開始したが

2013年7月10日(水)14時58分
ジェームズ・パーカー

策に溺れた? ワインをめぐる中国のEU分断作戦は裏目に出る可能性も

 交渉に強い中国商務省らしいやり方だ。同省は先週、EU加盟国から中国に輸出されているワインがダンピング(不当廉売)されている疑いがあるとし、調査を開始したと発表した。

 発表前日、EUは中国産の太陽光パネルに対する反ダンピング関税の導入を決めていた。この問題ではEU内に温度差があり、ドイツとイギリスが対中制裁に消極的なのに対し、積極姿勢を示してきたのがフランスとイタリアだ。制裁積極派の両国が有力なワイン輸出国であることは言うまでもない。

 しかし、もし中国側がフランスとイタリアを屈服させて、太陽光パネル問題で譲歩を引き出そうと考えているのだとすれば、ほぼ確実に逆効果になる。

 フランス貿易省は、中国の決定を「不適切で非難されるべき」と批判。オランド仏大統領も、この問題でEUを結束させたいと心に決めているようだ。中国産太陽光パネルに対する反ダンピング関税導入に反対していた国々も、中国の露骨な分断作戦を不愉快に感じるだろう。
 
 もっとも、EUが対中強硬路線でまとまると考えるのは早い。最近のEU諸国は、欧州全体のことより、自国の都合を優先させる傾向が強いからだ。

 中国のワインメーカーの株価は早速上昇したが、おそらくこちらもまだ気が早い。中国当局がダンピングを立証するのは簡単でないからだ。それに、中国でのフランスワイン人気の高さを考えると、たとえ値上がりしても消費者が中国産ワインに乗り換えるとは限らない。

From the-diplomat.com

[2013年6月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の社債権者、返済猶予延長承認し不履行回避 

ビジネス

ロシアの対中ガス輸出、今年は25%増 欧州市場の穴

ビジネス

ECB、必要なら再び行動の用意=スロバキア中銀総裁

ワールド

ロシア、ウクライナ全土掌握の野心否定 米情報機関の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中