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安全保障

日米関係は本当に悪いのか

2012年9月24日(月)11時28分
リチャード・ワイツ(ハドソン研究所上級研究員)

進まない韓国との協力

 そこには明確に中国に言及した「戦略目標」がいくつかある。例えば「中国に国際的な行動規範の遵守を促す」ことや、「中国が軍事力の近代化と活動に対する開放性と透明性を高め」ること。また中国を名指しはしていないものの、アジア太平洋地域の安全保障環境を不安定にするような軍事力の獲得を抑制することも、目標の1つとされている。

 2プラス2の共同声明ではこのほかにも、日米同盟の防衛協力の強化が唱えられている。具体的には合同訓練・演習の拡大や施設の共同使用を検討し、情報共有や共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR)活動を拡大するという。また宇宙やサイバー空間での脅威に対処する上でも、積極的に協力する方針を確認している。

 さらには日米だけでなく、アジア太平洋地域で利害が一致する第三国とも安全保障協力を推進し、場合によっては人道支援などで合同演習や後方支援を通じた多国間協力を推進することも盛り込まれている。

 10年末に刷新された「防衛計画の大綱」(新防衛大綱)も、有効な抑止力を確保するには日本単独の努力だけでなく、二国間・多国間協力(国連平和維持活動への参加など)が不可欠としている。なかでも「基本的な価値」と「安全保障上の多くの利益を共有する」オーストラリアと韓国とは、二国間およびアメリカを含む多国間協力を強化するとしている。

 実際ここ数年、日米プラス1カ国による3カ国協力が進展している。なかでも目立つのがオーストラリアとの協力だ。07年に日豪外務・防衛閣僚協議(日豪2プラス2)が始まり、10年には自衛隊とオーストラリア国防軍間の物品・役務相互提供協定(日・豪物品役務相互提供協定)が結ばれた。

 ただ、日本と韓国の二国間協力は、北朝鮮という共通の懸念があるにもかかわらず、歴史的なしこりのため、あまり進んでいない。

宇宙とサイバー空間へ

 アメリカの対アジア政策は、在日米軍のような米軍の長期駐留を避ける方向に向かっている。それだけに日米両国は今後も、防衛施設統合の可能性を探るべきだ。現在、航空自衛隊と海上自衛隊が米空軍統合本部と海軍作戦本部とに連絡将校を派遣し、米軍の戦術や手順を学ばせることが検討されている。アジア・太平洋地域の戦略見直しに伴い、米軍のアジア配置が流動的になっている点からみて、有意義な試みといえる。

 もう1つ日米両国が注目すべきなのがサイバーセキュリティーだ。米軍も自衛隊もコンピューターネットワークに大きく依存している。単に情報を共有するだけでなく、サイバー環境がダメージを受けた場合を想定した合同演習の実施など、より強力なイニシアチブを検討するべきだろう。

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