最新記事

安全保障

日米関係は本当に悪いのか

2012年9月24日(月)11時28分
リチャード・ワイツ(ハドソン研究所上級研究員)

ステルス戦闘機の製造に日本も参加?

 冷戦の終結後、日米同盟は大きく変容したが、日米安保条約の根幹は変わっていない。その本質は、アメリカが日本を守り、日本がそれを支援するために米軍基地を受け入れ、独自の防衛体制を強化するという相互の約束だ。

 森本の訪米に先立ち、7月にはアシュトン・カーター米国防副長官が日本を訪れた。このときカーターは、米政府の日本重視の姿勢に変わりがないことを強調した。日本はアメリカにとってアジアで最も重要な同盟国であると明言し、アジア太平洋諸国歴訪(ほかにタイ、インド、韓国を訪問した)で「東京を最初に訪れたのは当然」だとも発言した。

 さらに、オスプレイ問題を解決するために協力し合うことを通じて、日米の信頼関係が強まることを期待すると、カーターは述べた。

 カーターとしては日本側と協議することがもう1つあった。最新鋭ステルス戦闘機F35の製造における日本の役割だ。

 F35の製造を請け負うのは米軍需大手のロッキード・マーティンだが、その開発は他国も出資すれば参加できる国際共同開発の形を取っている(ただカーターはこれに関連して、どの国がどの部品を担当するかは米国防総省ではなくロッキードが決めることだと強調した)。

 民主党が普天間基地の「(沖縄)県外移設」を公約に掲げ、09年に政権を握って以来、日米安保は行き詰まり状態にあった。野田が民主党首相として初めてホワイトハウスを公式訪問したのも、この問題にひと区切りついた今年4月末のことだった。

 このとき発表された日米共同声明で、両国は民主主義の理念に基づきアジア太平洋地域の安全保障と経済成長のために協力することを確認した。実際、オバマ政権が明らかにした軍事・外交におけるアジア太平洋地域への重点シフトと、日本の民主党政権が推進する「動的防衛協力」は、東アジア全体の平和と安定に貢献する可能性がある。

 共同声明には「11年の共通の戦略目標」を踏まえたコミットメントという表現がある。ここでいう共通の戦略目標とは、11年6月に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)の最終共同声明「より深化し、拡大する日米同盟に向けて──50年間のパートーナーシップの基盤の上に」で示されたものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

TSMC、熊本県第2工場計画先延ばしへ 米関税対応

ワールド

印当局、米ジェーン・ストリートの市場参加禁止 相場

ワールド

ロシアがウクライナで化学兵器使用を拡大、独情報機関

ビジネス

ドイツ鉱工業受注、5月は前月比-1.4% 反動で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「コメ4200円」は下がるのか? 小泉農水相への農政ト…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中