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北朝鮮

「偉大なる指導者」「親愛なる指導者」の次は何?

まだ何の功績もない金正恩にふさわしい呼称は何か、誰がどうやって決めるのか

2011年12月21日(水)15時57分
ウィル・オレマス

煽動部泣かせ? 金正日(右)の死去で突然大役に就いた三男の金正恩(2010年10月) Petar Kujundzic-Reuters

 北朝鮮の金日成(キム・イルソン)は、国民の間で「偉大なる指導者」として知られていた。その息子であり、後継者となった金正日(キム・ジョンイル)総書記は「親愛なる指導者」だった。

 では今、その後継者となった金正恩(キム・ジョンウン)はいったいどんな指導者と呼ばれるのか? 北朝鮮の独裁者に付ける形容詞を決める責任者は誰なのか。

 それは宣伝扇動部だ。他のスターリン主義的な独裁政権と同じく、北朝鮮ではプロパガンダは重大な仕事。宣伝扇動部は「アジプロ(扇動宣伝活動)」という言葉の元になったソ連の機関をモデルにしており、体制強化のためのスローガン、芸術作品、映画、報道を広めるという任務を負っている。例えば新しい指導者や後継者として、ある人物への支持を集めるべき時に、その愛称を決めるのも彼らだ。

 第二次大戦後にソ連の後ろだてを得て北朝鮮の実権を握った独裁者、金日成がいつ「偉大なる指導者」と呼ばれ始めたのかは完全には明らかでない。早くも1949年にはその呼称が使われていたという説明もある。実際に定着したのは60年代だ、との指摘もある。中国とソ連の対立を受けて、金がソ連から距離を置くようになり、北朝鮮という国家を自らの理想に合わせて作り変えようとした時期だ。

血筋しか威張れるものがない

「偉大なる指導者」という呼称の定着に最も力を入れたのが、息子の金正日だろう。彼は自らが立派な後継者であることを証明しようと、父のプロパガンダ活動で主導的役割を担い、父の偶像を造形する責任者となった。「偉大なる指導者」という呼称を考えたのは金正日ではないが、その普及に努めたのは彼だ。

 80年代前半までに、金正日は朝鮮労働党のトップと、父の後継者としての地位を確立した。彼が「親愛なる指導者」という呼称を得たのは82年。父・金日成はまだ「偉大なる指導者」と呼ばれていた。

「偉大なる指導者」や「親愛なる指導者」という呼称からは、北朝鮮のすべての独裁者が「指導者」に好意的な形容詞を付けて表現されるかのような感じを受ける。しかし、その翻訳が誤解を招く恐れもある。金日成と金正日の呼称は朝鮮語では違った名詞が使われ、父親のほうが高尚な言葉が当てられている。それに金日成の別称は1語で、息子の金正日は2語から成っている。

 では金正日の三男・金正恩はどうか。09年、彼が「英明なる同志」という呼称を得たときに、指導者としての地位継承に向けた動きは始まった。昨年、それが「親愛なる若き大将」に変わった時点で、権力への道が確立されたと思われる。国営メディアは父・金正日の死を伝えるニュースで、彼を「偉大なる継承者」と呼んだ。20代の金正恩には彼自身の功績がないので、その呼称は権力継承の正当性、つまり血筋を強調するものになっている。

 新しい指導者の呼び名はこのまま変わらないのか。それは事態がどう展開するかにかかっている。金正恩が数十年も権力の座にあり続けたら、おそらく今の呼称を脱ぎ捨て、自分自身の力で何らかの「指導者」になるのだろう。

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