最新記事

インド社会

幼い愛娘に性転換を迫るインドの狂気

家計の負担になる「娘」を手術で「息子」に生まれ変わらせようとする親が後を絶たない

2011年7月4日(月)18時56分

命の価値 インドではいずれ後継ぎになる男児を欲しがる両親が多い Jitendra Prakash-Reuters

 一家の後継ぎとして、いずれ家族を支える存在になる男の子は大歓迎だが、嫁ぐ時に多額の持参金を持たせなければならない女の子はいらない──そんな考え方が根強く残るインドでは、お腹の赤ちゃんが女の子だとわかると中絶するケースが今も後を絶たない。それどころか、男児を切望するあまり、幼い女の子を男の子に変える性転換手術まで横行している。

 地元紙ヒンダスタン・タイムズの報道によれば、マディヤ・プラデーシュ州インドールでは、1歳の赤ん坊を含む300人もの女の子が生殖器形成手術によって男の子にさせられたという。親たちは手術1件につき、約2000ポンド相当の費用を支払うらしい。

 この報道を受けて、マディヤ・プラデーシュ州当局は調査を開始。インド医療評議会はこうした手術の必要性を個別の事例ごとに評価・判断する専門組織の立ち上げと、すべての都市におけるアセスメントの実施状況の確認を求めている。

 手術費用が格安な上に、周囲に知られずに手術を受けられるため、インドールにはニューデリーやムンバイからも大勢の「矯正」手術希望者が押し寄せていると、ヒンダスタン・タイムズは伝えている。

 女性と子供の権利拡大を訴える活動家たちは、こうした手術を「インド女性を馬鹿にした社会的狂気」だと非難している。小説家でフェミニストのタスリマ・ナスリーンは「衝撃! 胎児を殺すだけでなく、生まれた女の子を手術によって男の子に変えるなんて」とツイートした。

意図的な誤診によって手術を可能に

 英テレグラフ紙によると、インドの「子供の権利擁護全国委員会」はマディヤ・プラデーシュ州政府に対して先週、実態を調査して15日以内に結果を報告するよう命じた。インド医療評議会と同州の医療担当当局は、男児を望む親たちと悪徳医師らによる「矯正」手術を阻止する対策を推奨している。

 調査対象になった医師らは、手術を受ける資格があるのは、男女双方の性的特徴を有した「半陰陽」の子供だけだと主張している。しかし人権擁護団体に言わせれば、彼らは手術を可能にするために意図的に誤まった診断を下しているという。手術では女性器からペニスを形成した上で、子供に男性ホルモンの注射を打つらしい。

 インドでは女児とわかると中絶するケースが多いため、妊娠中の性別診断は禁止されている。しかし、たとえ無事に生まれても、性転換手術を受けさせる親がいなくならない限り、子供にとっては悲劇的な状況に変わりはない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、1月は前月比・前年比とも予想外

ワールド

トルコ船舶がホルムズ海峡通航、15隻のうちの1隻に

ビジネス

中国の2月新規融資、予想以上に前月から急減 需要低

ビジネス

香港、種類株発行企業の上場規制緩和を提案 IPOに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 2
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車整備は収入増、公認会計士・税理士は収入減
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 5
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 6
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 7
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    2万歩でも疲れない? ディズニー・ユニバで足が痛く…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 10
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中