最新記事

オランダ

イスラム差別発言は表現の自由か

差別に寛容な判決で、第3の勢力を率いる極右政党のイスラム差別や移民排斥に拍車がかかりかねない

2011年6月24日(金)15時56分

右傾化社会 ウィルダースを支持するデモも(1月20日、アムステルダム) United Photos-Reuters

 イスラム教の聖典コーランを「ファシズム的」と呼び、アドルフ・ヒトラーの著作『我が闘争』になぞらえたことで、オランダの極右政党・自由党党首ヘールト・ウィルダースは、数限りない殺人予告を受けてきた。だがウィルダースにとってイスラム教を非難することは表現の自由であり、自分自身の権利の行使に過ぎない。そしてその訴えがついに認められた。オランダ・アムステルダム地裁が23日、彼の発言はイスラム教徒に対する憎悪を煽ってはいないという判決を下したのだ。

 裁判長は、ウィルダースが製作した17分の短編映画『フィトナ』は「憎悪に満ちて」いて「ショッキング」ではあるが、表現の自由の範囲と認められると述べた。ウィルダースはこの映画でコーランが信者の憎しみを煽っているとして91年の米同時多発テロと結びつけている。

 殺害予告のせいで、47歳のウィルダースは24時間体制の護衛生活を送っている。髪をブロンドに染めた彼は反移民政策を標榜する自由党を率い、今ではオランダ国会で3番目に大きな勢力を誇っている。ウィルダースは反イスラム・反移民に関してオランダで最も活発に発言する人物だ。

 英BBCによれば、ウィルダースは彼の言うところの「イスラム教の脅威」への批判を今後も続けるらしい。「イスラム教批判が合法だというのは良い知らせだ」と、彼は言う。「(イスラム批判は)必要だ。私たちの社会のイスラム化は大きな問題で、自由に対する脅威となっている。そして私はこう発言することを許されている」

差別を煽っているのは事実上の副首相

 ロイター通信は判決でウィルダースの政治的影響力が強まり、緊張が高まる可能性があると報じている。彼は移民の数の削減や、イスラム教徒が顔を覆うベールやブルカを禁じる案についてすでに政府の譲歩を勝ち取っている。

「彼の政治的見解は法律で認められ、彼の政治的な発言は合法化された」と、アムステルダムにあるフリー大学の政治学者アンドレ・クローウェルは言う。「彼の政治力は増した。与党にとっては国会運営に不可欠な勢力だ。政権に入らなくても、実質的には副首相のような存在だ」

 マイノリティー団体は、この問題を国連人権委員会に持ち込もうとしている。オランダがマイノリティーを差別から守ることに失敗した、と主張する予定だ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IAEA、イラン・ナタンズ核施設の入口損傷と確認

ビジネス

チューリッヒ保険、新株発行で50億ドル調達 ビーズ

ビジネス

イラン情勢不透明、ECBは柔軟姿勢で状況注視とギリ

ビジネス

ニデック第三者委「永守氏が一部不正容認」、業績圧力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中