最新記事

キャリア

働く女性の幸せのカギはオランダ流にあり

マゾヒスティックなキャリア志向で必死のアメリカ女性とは大違い、パート勤務で余裕の私生活を楽しむ術

2011年1月7日(金)12時42分
ジェシカ・オリーン

 アメリカからオランダに来て約3カ月、私は予想外の発見をした。この国の女性たちと私はかなり異なる存在らしい──。

 私は自分のキャリアが今後、どうなっていくかが気掛かりで仕方ない。毎日のようにこれまでのキャリアを振り返っては、心の中で自分の働きぶりを手厳しく批判してしまう。

 私だけではなくアメリカに暮らす女友達の多くも、同じようなマゾヒスティックなキャリア志向の持ち主だ。ところが周囲にいるオランダの女性たちはキャリアアップにほとんどこだわっていない。半日の勤務を終えると、午後2時には友達とコーヒーを楽しむ生活を送っている。

 女性にとっての住みやすさを比べた国際ランキングでは、オランダは常に上位5位以内につけている。職場進出も盛んで、OECD(経済協力開発機構)によれば、オランダ女性の就業率は約70%に達する。だがフルタイムで働いているのは女性全体の10%に満たない。

 そしてオランダ女性はそうした現状に満足している。もっと長時間働きたい、もしくは今以上に責任のある仕事をしたいと望む女性は4%未満。昇進に有利になると言われても、大半の女性は勤務時間の延長を拒む。

 オランダ女性がパートタイム勤務を望む理由として、幼い子供の保育費用が高いことを挙げる人もいる。だが、パートタイム勤務の女性の62%に幼い子供はいない。おまけに子供たちが成長して独立しても、勤務時間を延長する女性はまずいない。

鬱にならない生き方の秘訣

 不思議な話だ。アメリカの場合、女性が目指すのはほぼ1つの方向のみ。ガラスの天井を突き破り、組織のトップに上り詰め、男と同じように尊敬の対象となり、男と同じだけの給料をもらうことだ。

 だが女性の幸福に関する複数の研究を見ると、職業や生き方の選択肢が広がり、経済的に自立しているにもかかわらず、アメリカ女性が以前よりも幸せになったとは言えないようだ。それどころか、情緒面では昔のほうが満たされていたらしい。

 オランダ女性をめぐる状況は他の国々と比べても非常に進歩的と言える。人工妊娠中絶の権利ははっきり認められているし、政界に進出する女性も多い。

 なのに女性の収入が世帯収入に占める割合は得てして小さい。オランダ女性の25%は経済的に自立していると言えるだけの額を稼いでおらず、収入の男女格差は欧州でもトップクラス。だがこれは女性がフルタイムで働いていないからであって、性差別の問題と結び付けて語られることはない。

 それどころか、女性は「パートタイムで働く権利」を守ることに強い関心を抱いている。00年には、勤務時間を短縮しても会社から不利な扱いを受けない権利を認める法律が制定された。

 デステントル紙の編集者マイケ・ファンルンベルフはこう語る。「経営の世界、つまり男の世界を見てオランダ女性はこう考える。ああ、望めばあんなこともできるのね。でも私は生活を楽しむほうを選ぼう、と」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、現時点でインフレ抑制に利上げ必要ない=クリ

ビジネス

テスラ株主、マスク氏への8780億ドル報酬計画承認

ワールド

スウェーデンの主要空港、ドローン目撃受け一時閉鎖

ビジネス

再送米国のインフレ高止まり、追加利下げに慎重=クリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 5
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 8
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中