最新記事

ロシア

モスクワ市長解任にプーチンが激怒?

大物市長を切って捨てた解任劇の裏には、メドベージェフ大統領とプーチン首相の巨大な権力抗争が

2010年9月29日(水)15時16分
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長)、アンナ・ネムツォーワ(モスクワ支局)

 モスクワのユーリ・ルシコフ市長は、長年政界で生きてきたベテラン政治家だが、つい最近になって権力者に盾突く恐ろしさを思い知らされた。きっかけはモスクワ郊外の森林地帯。ルシコフがここに高速道路を建設しようとしたところ、メドベージェフ大統領に阻止されたのだ。怒ったルシコフが公の場で不満を語ると、ロシア政府はすかさずメディア攻勢を仕掛け、ルシコフは汚職や脅迫、殺人に手を染めた人間だと集中砲火を浴びせた。

 ルシコフはすべての疑惑を否定し、今のところ市長の座を維持している(編集部注:ルシコフは9月28日、メドベージェフに解任された)。しかし裏では、もっと強大な対立が起きている可能性がある。メドベージェフとプーチン首相の権力抗争だ。

 プーチンはルシコフと親しいわけでもないのに、メドベージェフの独断的な攻撃に激怒しているという。ロシア国内では、そんな反応をプーチンが見せるのは、12年の大統領選でメドベージェフが権力の座を明け渡さず、自ら再選を目指して立候補しようとしているからではないかとみる向きも多い。

 もっともそれが本当なら、メドベージェフが直面する敵はプーチンだけではないだろう。ルシコフのように大きな力を持つ官僚や実業家も、大勢抑え込まなければならない。

[2010年10月 6日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中