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中国経済

中国富裕層の大きすぎる「灰色所得」

2010年9月13日(月)12時09分
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京支局)

 国民の収入に照らして考えると、中国のマンション価格はばかばかしいほどの高値に思える。この矛盾に、不動産バブルの崩壊を唱える悲観論さえ上がっている。

 だがクレディ・スイスが実施し、中国経済改革研究基金会が発表した新たな調査結果はそうした考えを覆す内容だった。調査によると、裕福な世帯上位10%の08年の可処分所得は2万500ドル。政府の公式統計の優に3倍だ。

 中国経済全体でも可処分所得は政府のデータが示すよりも90%も大きい。申告されていない収入の総額はおよそ1兆4000億ドルと、同国のGDPの30%に匹敵するという。

 この数字を見れば、なぜあれほどたくさんの中国人たちがグッチのバッグやBMWを買えるのかという疑問にも説明がつく(同国の高級品業界は、他国に比べてかなり拡大している)。エリート層の生活様式には、贈り物や賄賂、無申告収入などといった形の「グレーな収入」が大きな役割を果たしている。

 だが一方でジニ係数(収入の不平等さを測る尺度)は非常に高く、貧富の差はアメリカ並みというよりもはやブラジル並みのようだ。この格差がいずれ、不動産バブルよりもっと深刻な危機を招くかもしれない。

[2010年9月15日号掲載]

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