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N・キャンベルの戦争法廷必勝ガイド

「血塗られたダイヤ」問題で召喚されたスーパーモデルのPR担当者が明かすイメージ管理戦略

2010年8月18日(水)17時25分
ラビ・ソマイヤ

厳粛に礼儀正しく ナオミ・キャンベルの姿がパパラッチの餌食になることはなかった(8月5日) Reuters TV

 シエラレオネ内戦の資金源となったダイヤ「血のダイヤモンド」をリベリアのチャールズ・テーラー元大統領から受け取ったとされる、スーパーモデルのナオミ・キャンベル。8月5日にオランダ・ハーグの国際戦犯法廷で証言台に立った彼女は、PR会社の力を借りて召喚を乗り切るための戦略を練っていた。

 テーラーは、シエラレオネの反政府勢力から受け取ったダイヤと引き換えに彼らを支援し、同国の内戦を助長させたとして罪に問われている。テーラー本人は、ダイヤの原石を所有したことは一度もないと主張。もしもキャンベルが彼からダイヤを受け取ったことが明らかになれば、テーラーの主張の誤りが証明される可能性がある。テーラーは、1997年に南アフリカで行われた晩餐会で、キャンベルにダイヤの原石の入ったポーチをプレゼントしたといわれている。

 PR会社アウトサイド・オーガニゼーションのシニアコンサルタント、ニール・ウォリスは8月11日、キャンベルに助言した内容を業界誌PRウィークの中で明かした。ウォリスとキャンベルの弁護士は、以下のプランに従ったという。ここに述べるのは、戦争犯罪裁判に召喚されたどんなスーパーモデルでも参考にできる攻略ガイドだ。

■控えめで礼儀正しく、質素に振舞うこと
 これは、キャンベルが法廷周辺でフリーカメラマンに撮影されるのを徹底的に防いだのと同じ理由だ。「ナオミ・キャンベルの姿を一瞬でも捉えようと追い回すパパラッチの混乱によって、戦争犯罪裁判の厳粛な雰囲気がぶち壊されるのを防ぐため」の戦略だったと、ウォリスは言う。証言する姿はインターネットで中継されはしたが、キャンベルが出廷する写真は最小限に食い止められた。まあ、これは結果論だが。

■土地勘を持て
 キャンベルのPRチームは、出廷の前日に裁判所までの道順を練りに練っていた。キャンベルが「山のような報道陣の前を車で通過したのに、彼らに気付かれることなく」こっそりと裁判所に入ることができたのはそのためだろう。

■「地味で場をわきまえた」服装をすること

■質問には「正直かつ明確に」答えよ
 この点が成功したかどうかは意見が割れそうだ。同じく晩餐会に出席したキャンベルの当時の事務所代理人と女優のミア・ファローは、受け取ったダイヤの贈り主がテーラーだとは知らなかったというキャンベルの証言を否定している。キャンベルの証言の大半は曖昧に終始した。さらにキャンベルはこの召喚は「迷惑」だと発言。これはPR戦略的にはマズい表現だった。

■法廷のために勝利宣言をしよう
 ウォリスによれば、メディアの報道は「おしなべて中立的な裁判報告で終わっており、これはPRの観点からしてみれば良い兆候だ」。そして何より、真の勝者は法廷だという。「ある国連スタッフが(まさにぴったりな表現で)われわれに語ったように、ナオミ・キャンベルが証言台に立った90分の出来事は、この裁判が続いていた過去3年間の中で最も世界のメディアに取り上げられ、血のダイヤモンドとテーラーの戦争犯罪の問題を世界に知らしめた」

 *


 戦争のような深刻な問題に関与したセレブにどれほどの影響が及ぶのかは分からない。だがウォリスに対しては、1つ助言がある。

 彼はキャンベルが到着する前の法廷は「文字通り、嵐の前の静けさだった」と表現しているが、これは正しくない。巧妙なPR作戦によってメディアによる大混乱からは免れたかもしれないが、この裁判所が実際に台風にでも襲われない限り、彼は「文字通り」などと言うべきではなかった。「例えて言えば」というのが、正しい言葉の使い方だ。ということで、このコンサルティング料はウォリスに請求することにしよう。

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