最新記事

油田開発

リビア爆破テロ犯釈放にBPの影?

2010年8月3日(火)16時01分
ラビ・ソマイヤ

 88年、米パンアメリカン航空103便がスコットランドのロッカビー上空で爆発。地上で巻き添えになった住民を含めて270人が死亡した。12年後、元リビア情報機関員のアブデル・バセト・アリ・アルメグラヒはこの爆破テロで有罪判決を受けて終身刑になり、スコットランドで服役を開始した。

 末期癌と診断されたアルメグラヒ(58)は昨年、スコットランド当局の恩赦でリビアに帰国。リビアの首都トリポリに到着した彼は英雄のような扱いを受けた。彼は余命数カ月とされていたが、あと数年は生存可能の見込みだ。

 恩赦には当初から反対者が多かったが、最近、英石油大手BPがリビアでの事業を有利に進めるためにアルメグラヒの釈放を働き掛けた説が浮上して新たに批判が強まっている。英タイムズ紙によれば、BPは07年にリビア政府と油田開発契約を結んだが、お役所仕事のせいで手続きが遅れていた。「アルメグラヒが釈放された今、手続きは円滑に進むだろう」とリビア消息筋は昨年、同紙に語った。

 ニューヨーク・タイムズ紙によれば、恩赦の決定にはリビアでのBPの苦境が考慮されたとジャック・ストロー司法相(当時)は認めている。BPは英・リビア間の囚人引き渡しに関してロビー活動を行ったと認めたが、アルメグラヒに特に関心があったわけではないという。

 訪米したキャメロン英首相とオバマ米大統領の7月20日の会談でも、この問題が取り上げられた。キャメロンは前政権時に決定された恩赦を批判。米上院外交委員会でも取り上げられることになり、BPのトニー・ヘイワードCEOが7月29日に証言を行う予定だ。スコットランド当局は恩赦の決定は適切なものだったと主張している。

 一方、01年のアルメグラヒの裁判に立ち会った国連スタッフの1人は、アルメグラヒの有罪判決そのものに疑問を提起している。政治的な判断が判決に影響を与えたというのが理由だ。

[2010年8月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランの報復攻撃にさらされるイスラエル、観光客4万

ビジネス

レアアース磁石確保に苦慮とフォードCEO=ブルーム

ワールド

カンボジア、タイとの国境紛争で国際司法裁判所に解決

ワールド

米ミネソタ州議員銃撃、容疑者逮捕と報道 標的リスト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中