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飛行機事故で生き残る方法

リビアの空港で起きた墜落事故で9歳の少年はなぜ生き残れた? ナーバスになる必要はない。そもそも飛行機事故に遭う確率は極めて低い。そして事故から生還する確率は意外に高い

2010年5月14日(金)17時10分
チェルシー・ジャック

奇跡の生還 乗員乗客104人のうち助かったのはオランダ人少年だけだった Reuters

 リビアのトリポリ空港で今月12日、南アフリカ・ヨハネスブルグ発の旅客機が着陸中に墜落した。この悲惨な事故でおそらく唯一の良いニュースは、9歳のオランダ人少年が生存していたことだ。乗員乗客104人のうち生き残ったのはこの少年だけだった。

 これだけの大惨事で生存者がいたことは勇気づけられることだが、反面痛ましくもある。今回の事故で、墜落事故の恐怖が常に頭から離れないタイプの乗客には1つの疑問が浮かぶだろう。どうすれば墜落事故を生き残れるのか?

 もちろん運が良くなくてはいけない。しかし日常生活に浸透している様々な通念をユニークな分析でひっくり返したベストセラー『ヤバい経済学』(邦訳・東洋経済新報)によると、それほど幸運でなくても生き残ることはできる。もし(この「もし」が重要なのだが)平均値をゆがませる年間数件の大事故を除くなら、飛行機事故の生存率は驚くほど高い。


 例えば、機体を修理しても使えないレベルの事故を意味する「完全機体損傷」について考えてみると、これまでに就航した446機のマクドネル・ダグラス製DC―10のうち、27機が「完全機体損傷」に到る事故を起こしたが、これらの事故では乗員乗客の69%が生還した。最悪の事故3件を除けば生存率は90%近くになる。


 そもそも乗っている飛行機が事故に遭う確率は低い。そしてそれが大事故になる確率はさらに低い。飛行機の墜落事故と死亡統計をまとめたウェブサイト「プレーン・クラッシュ・インフォ」を運営するリチャード・カバブジアンはこう書いている。


 飛行機事故は極めて稀だ。1回のフライトで乗客が死ぬ確率は約800万分の1。ある乗客が1日に1回づつ毎日飛行機に乗っても、統計上では事故で死亡するまでに2万1000年以上かかる。


 事故や災害の生還者の物語を集めた『サバイバーズ・クラブ』の著者ベン・シャーウッドによると、飛行機事故で亡くなった人の30%は、適切な行動を取っていれば生き残れていたという。ウェブのインタビュー記事でシャーウッドは、安全情報をきちんと読み、機体の出口を確認する大切さを強調している。墜落した飛行機の機内から直ちに脱出するのは、生き残るための最重要要素の1つだ。(だから航空専門家は飛行中は靴を脱がず、出口から5列以内の席に座るよう薦めている)

 航空機事故と生存者の歴史を調べた『最悪の状況で生き残るハンドブック』の著者ジョシュア・ピベンは、座席の位置がカギだと言う。「航空機は頭から落ちるので、後部の座席に座った方がいい」

 雑誌ポピュラー・メカニクスの71年から09年に起きた20件の民間航空機墜落事故に関する調査でも、同様の結果が示されている。機体後部の座席に座っていた乗客の生存率は69%で、ファーストクラスの乗客の生存率は49%だった。

 もちろん生き残るための最良の策は事故そのものを避けること。その対策としてピベンは「直行便に乗ることが大切」だと言う。これで離着陸の回数が減る。ピベンによれば、墜落事故の大半が離着陸の際に起きている。

 これは51年から08年にかけて起きた重大事故を調べたボーイングの調査でも裏付けられている。死者が出た事故の36%が最終着陸態勢時か着陸時に、20%が離陸か離陸直後の上昇中に発生している。

 今回の事故で家族や友人を亡くした人にとって、こんな情報は何の慰めにもならないが。

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