最新記事

回顧

「今年の人」ネダ・アガ・ソルタン

イラン大統領選をめぐる抗議デモの最中に射殺された反体制運動のシンボル

2009年12月21日(月)14時52分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

偶像 ネダの殺害映像はYouTubeに投稿され、世界に衝撃を与えた(6月25日、フランスでの追悼式典で飾られたネダの写真) Gareth Watkins-Reuters

 今年世界に最も大きな影響を与えた人物は間違いなくオバマだが、最も心に残った映像は、イラン女性ネダの悲劇的な最期をとらえたものだ。
 
 イランは中東を動かす中心的な力になり得るし、「理解と進歩」の新しい時代の要ともなり得る。中東各国の中でイランほど民主主義にふさわしい国はないだろうし、国際社会での役割を担える国になれそうに思える。だがそれも、為政者が国民の声に耳を傾けるようになって初めて可能になる。

 ネダは国民の期待を象徴していた。彼女はまた、アハマディネジャド政権および弾圧を裏で操っている宗教指導者たちが血で汚れていて、自国にとって真の敵であることを白日の下にさらした。

 ガンジーが理解していたように、歴史は指導者によってつくられるのではない。新しい時代を切り開く一握りの人々がつくるのだ。

 ネダは逝ってしまったが、闘争の偶像的なイメージをこの世界に遺した。そのイメージが私たちに与えてくれる力は、核開発計画や軍隊をもってしても、神との関係をどのように吹聴しようとも、アハマディネジャドやその他の世界中の独裁者どもには決して手に入れることのできない偉大な力だ。

Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog, 21/12/2009. ©2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訪日客の売り上げ3割減 6月、高島屋とJフロント

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB期間を8月1日まで延長 

ワールド

トランプ政権、不法移民の一時解放認めず=内部メモ

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に失望表明 「関係は終わって
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中