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コペンハーゲン会議

意外な反エコ国カナダに批判集中

2009年12月11日(金)14時24分
ウイリアム・アンダーヒル(ロンドン支局)

 12月7日からコペンハーゲンで国連気候変動枠組み条約第15回締結国会議(COP15)が開かれている。そんななか、新たに世界の問題児となった国に大きな怒りが向けられている。カナダだ。

 長年にわたって正義の擁護者として尊敬されてきたカナダだが、コペンハーゲンに集まった各国代表にとっては「反エコ国家」の1つにすぎない。二酸化炭素(CO2)を大量に排出するアルバータ州のオイルサンド(油砂)業界を筆頭に、汚染をまき散らしながら多大な利益を上げるエネルギー産業を政府が平然と支援しているからだ。

 カナダの「転落」は突然に思えるかもしれないが、以前から批判されるような行動を取ってきた。3年前には京都議定書から正式に脱退。今や同国のCO2排出量は99年比で25%増えている。

 「アメリカは少なくとも最初から脱退する勇気があった」と、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のメンバーである科学者サリームル・ハクは言う。「カナダは署名した後は何もしなかった。その結果、合意の意味がなくなった」

 カナダの立場はどんどん悪くなっている。11月には環境保護団体グリーンピースをはじめとするNGOのグループが、カナダの英連邦加盟資格停止を要求した。今年の気候変動実績指標では59位と、最下位のサウジアラビアに次いで悪かった。

 コペンハーゲン会議ではアメリカの代表団はひと息つけるかもしれない。一番たたかれるのはカナダだろうから。

[2009年12月16日号掲載]

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