最新記事

米外交

非民主国家イランに「核」の権利なし

国民の権利を踏みにじるアハマディネジャド政権に、国際的な権利を認めるべきではない

2009年6月15日(月)17時25分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

勝者の弾圧 選挙結果をめぐる抗議行動が広がるなか、市民に棒で殴りかかる機動隊員(6月14日、テヘラン) Reuters

 マフムード・アハマディネジャド大統領が再選を果たしたイラン大統領選の結果には疑問が残る。投票日直前に有権者への脅しや反対陣営への妨害が行われ、そしておそらく投票操作もあったとみられる。

 アハマディネジャドは6月14日、イラン国民は選挙によって分断されていないなどと放言するばかげた記者会見を開き、すでに失墜している信用をさらに下げた。街頭では抗議デモの市民と警官隊が衝突を起こしているというのに。

 こうした状況を前にすると、今一度問いただしたい疑問が湧いてくる。イランの政権が国民の権利を尊重しない以上、バラク・オバマ米大統領はイランに対する外交姿勢を見直すべきではないか。
 
 ジョン・ケリー米上院外交委員長が11日に発言したように、イラン国民はウラン濃縮を行う「権利」を有するというのが、米政府の一般的な見解だ。われわれは今、この想定上の権利を尊重しつづけるべきなのだろうか。

 多くの理性的な米国民は、イランとの対話は可能だという希望を抱いてきた。イランが多様な意見を認める多文化の国だという前提で──。

 しかし民主主義が破壊され、少なくとも侵されていると見られる現状では、アハマディネジャド政権は国民の声を聞き入れていないと判断できる。核開発を管理しているのは一般国民ではなく政府なのだから、イランの核開発を容認する方向に動いてきた米政府の見解は、今回の選挙を受けて考え直すべきではないだろうか。

アメリカは対イラン政策を見直せ

 答えは分かりきっている。そう、アメリカは対イラン政策を見直すべきだ。自国民の基本的な権利を否定するような国の「国際的権利」を認めるべきではない。この論理こそオバマの外交政策の核であると思う(実際、例えばキューバに関してはそのように接している)。

 現実的に考えても、国民との約束を平然と破り世界に嘘をつく国を相手に、核拡散に関わる重大な決定を下すべきではない。核拡散防止条約(NPT)を修正して、平和利用を目的とした核開発の権利を民主国家のみに限定してはどうだろうか。

 今回の大統領選は、アメリカが同盟国と協議して、イランの核問題にどう対処するか考え直す良い機会だ。反対勢力に勢いがあり、改革への準備ができているイランのような国に対しては、国際協調で立ち向かえば政権弱体化もそう難しい話ではないのだから。


Reprinted with permission from David J. Rothkopf's blog , 14/06/09.
© 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、3会合連続金利据え置き ルピア支

ワールド

戦略的互恵関係を推進、国会発言は粘り強く説明=日中

ビジネス

アングル:米株式取引24時間化、ウォール街では期待

ビジネス

英CPI、11月+3.2%に鈍化 市場は18日の利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中