最新記事
教育

監視か献身か? 中国の母親、息子の授業に3年間同席で波紋

2018年7月2日(月)18時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

大学入試の試験会場の外で子供を待つ親たち Stringer-REUTERS

<受けた授業は計3000コマ。わが子への可愛さ余っての行動は、正常なものと言えるのか>

中国のある学校で「献身的すぎる母親」が問題になっている。息子の通う中学校で3年間、寄り添って授業を受けたこの母親の名前はダイ・ジュア。孟母三遷の教えとは言うものの、行き過ぎた孟母行為は「献身」という美徳では済まされなかった。この母親の真似をしないようにと教育専門家は子を持つ親たちに注意喚起した。

湖北省武漢市に住むダイ・ジュアの息子のシャオ・ファは小学校では優秀だったが、中学校に上がると勉強の変化にうまく付いていけていずに成績が落ち始めた。

「新しい環境になったからだと最初は思っていたけれど、のちに先生が息子の授業中の様子を見学しに来るよう、アドバイスを下さったのです」とダイ・ジュアは言う。かくして彼女は息子と一緒に登校するようになったという。

授業を受けているのは子でなく母親

授業に参加して早速、母親は我が子の異変に気付く。息子は授業中に気が散りやすく、他の生徒に比べ集中力に欠けていた。「悪い癖を直すのは簡単ではないし、先生も始終息子に注意を払っているわけにもいきません。だから私が見守ろうと決めました」と話した。

ダイ・ジュアは息子の隣に座って、ひたすら各科目のノートを取り続けた。過去3年間で約3000コマの授業を受けたという。

一方で学校側は、授業での生徒の様子や、学校の運営状況を理解してもらうために授業に同席することを親に勧めていたそうだが、教育評論家はこの対応は推奨すべきではないと言う。

香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは、「(この行為は)生徒に必要以上にプレッシャーを与えかねない」という四川省の教師ワン・ヤオの指摘を掲載。ダイ・ジュア親子の例を真似しないよう子を持つ親に呼びかけている。

今回の一件では、母親の愛が一線を超えた、と湖南省のポータルサイトRednet.cnは報じている。そして子供への過剰な干渉は子供にとって幸せな学校生活を送る権利を奪いかねない、と警鐘を鳴らした。

金が無ければ命を差しだす

中国では、子供のより良い教育ために過度の犠牲を払う家族が大勢いる。サウスチャイナ・モーニングポストによると、2013年には山東省のある父親が、娘のために約1000万元(1億7000万円)で幼稚園を買収したというニュースが大々的に報じられた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ステファニク下院議員、NY州知事選出馬を表明 トラ

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、11月速報値は約3年半ぶ

ワールド

イラン大統領「平和望むが屈辱は受け入れず」、核・ミ

ワールド

米雇用統計、異例の2カ月連続公表見送り 10月分は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 9
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 10
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中