最新記事

アメリカ政治

トランプ後継への隠し切れない野心、元国連大使ニッキー・ヘイリー

NIKKI HALEY'S BIG CHANCE

2021年3月5日(金)18時00分
ビル・パウエル(本誌記者)

保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」のクリフォード・メイ理事長に言わせると、ヘイリーは「まっとうな新トランプ主義者」だ。トランプの掲げた主張は踏襲しつつ、彼の乱暴な振る舞いは(いわば、材木にやすりをかけて滑らかにするように)改めていく。これならトランプの好戦的な姿勢に反発していた人たちも戻ってくるかもしれない。

ただしヘイリーには、決定的にトランプと異なる点もある。例えば人種差別の問題だ。彼女の友人たちが好んで口にするのは、地元サウスカロライナ州のチャールストンにあるエマニュエル・アフリカン・メソジスト監督教会で白人至上主義者が9人の黒人信者を殺害した2015年の事件だ。

これにショックを受けたヘイリー(当時は州知事)は、州都コロンビアの州議会議事堂前に昔から掲げられていた南部連合旗(南北戦争で南軍が使用した旗)を降ろそうと提案した。もちろん、有権者からの反発や抵抗が大きいことは予想できた。でもそれを承知で、ヘイリーは超党派の支持を集めるために奔走し、結果を出したのだった。

同州選出のティム・スコット上院議員は、そのとき超党派の合意ができた経緯についてこう語っている。「あのときは本当に優しい心をもって、弱者の立場を代弁する必要があった。でも彼女はそれを、見事にやってのけた」

南部連合旗の撤去に、アフリカ系アメリカ人や民主党の州議会議員が賛成するのは当然だった。しかしヘイリーは州共和党の大物ポール・サーモンド(超右派として鳴らした故ストロム・サーモンド元上院議員の息子)らも口説き落とし、超党派の合意を取り付けることに成功した。

少なからぬサウスカロライナ州民があの旗に一種の「敬意」を抱いていることは、彼女も承知していた。しかし彼女は、あれがアメリカ史における最も醜悪な部分の象徴であることを理解させた。そしてついに旗が降ろされた日、ヘイリーは言ったものだ。「わが州にとって、今日は素晴らしい一日となった」

「元ボス」と戦う覚悟もある

そうした判断、そうした振る舞いのできる資質こそ、2024年の共和党大統領候補には求められる──少なくともヘイリーの同志たちはそう思っている。

彼女なら「トランプ的な政策を、トランプ的な混乱なしで実現できる」。ヘイリーと懇意なある上院議員は、昨秋の選挙前からそう言っていた。「州知事として冷静かつ現実的な実務能力を発揮した実績があり、国連大使として外交の経験も積んだ。しかも移民の子で、全てがエレガントだ。トランプJr.であれ誰であれ、これだけ条件のそろった彼女に勝てるはずがない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イラン協議、双方の主張に矛盾 「合意目前」「協

ビジネス

米国株式市場=大幅反発、トランプ氏の攻撃延期表明で

ビジネス

最も可能性の高い道筋は一つでない、金利巡り=SF連

ワールド

ロ、イランに情報提供 「反論の余地ない」証拠ある=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 3
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に困る」黒レースのドレス...豊胸を疑う声も
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    イラン戦争の陰で悪化する「もう1つの戦争」とは?
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 7
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 10
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中