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司令塔サマーズの後釜は誰だ

クルーグマンかタイソンか──オバマ政権の信頼を回復できる国家経済会議の後任委員長は

2010年11月8日(月)15時53分
アラン・マスカレンハス

厳しい現実 サマーズはオバマ政権が打ち出した7870億ドル規模の景気刺激策の責任者だったが、十分な効果は上がらなかった Joshua Roberts-Bloomberg/Getty Images

 9月21日、ローレンス・サマーズが年末までに国家経済会議(NEC)委員長を退任するというニュースが流れると、人々は後任人事占いに熱中し始めた。バラク・オバマ大統領は、経済政策の次の司令塔に誰を指名するのか。そしてその指名は何を意味するのか。

 ホワイトハウスにとっては難しい人事で、慌てて決めることはしないという。残酷な真実を言ってしまえば、経済に関する議論でオバマの敗色はますます濃厚になっている。

 失業率はいまだに9・6%で高止まりしている。サマーズの象徴にもなった7870億ドルの大規模な景気刺激策も、十分な効果は上がらなかったというのが大方の見方だ。オバマ政権が財政支出を増やせば増やすほど、大した効果もないのに赤字ばかり膨張させていると批判にさらされた。

 サマーズの後任にはどんな人間がふさわしいのか。オバマ得意の演説もすっかり色褪せてしまった今、一流のコミュニケーターであることが極めて重要だ。オバマ政権の経済政策の正当性を説得力を持って伝えられる誰か。草の根保守派連合「ティーパーティー」の誹謗中傷をものともせず、明快なメッセージを発信できる誰か。

 その点、官僚出身のティモシー・ガイトナー財務長官はあまり役に立たなかった。現場の対応を得意とする大統領経済諮問委員会(CEA)のクリスティーナ・ローマー委員長が退任した今、メッセージの発信役はこれまで以上に必要とされている。

エコノミストかCEOか

 イデオロギーも重要だ。サマーズの新自由主義的な側面にどうしてもなじめなかった左派は、オバマが左寄りに転換してクリントン政権の労働長官だったロバート・ライシュや、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンなど、リベラル派の経済学者を指名してくれることを夢見ている。

 一方で財界は、ビジネス経験を通じて経済の実態をよく知る経営者を選ぶよう圧力をかける。経営者を選べば、ウォール街にイデオロギー上の「聖戦」を挑むことしか頭にない象牙の塔のエリート主義者、というオバマ政権批判も、一時的には和らぐだろう。同時にそうした人事は、中間選挙後に議会の多数派を共和党に握られた場合に、オバマ政権もやや右寄りにシフトする用意があると示す合図にもなる。

 ひょっとすると最も重要な決定要因は、男女のバランスだ。オバマ経済チームの幹部は、CEA委員長がローマーからオースタン・グールズビーに代わったこともあって男だらけになっている。女性が選ばれる確率はかなり高いだろう。

 その他の条件となると、オバマには両極端の選択しかない。データを分析し政策立案の調整役を担う職責にぴったりなのは経済学者だ。そうでなければ、経営者として優れた実績を持った候補者を真剣に検討するしかない。下馬評に挙がっている多くの候補者のうち、最も可能性が高いのは──。

レベッカ・ブランク
 経済問題担当の商務次官。貧困問題を専門とする経済学者として名高い。クリントン政権でCEAのメンバーを務めたこともあり、オバマがビジネス経験者より政策立案のための頭脳を頼りにするなら、手堅い候補の1人。

ジャレッド・バーンスタイン
 ジョー・バイデン副大統領の首席経済顧問。オバマが彼を評価していることはよく知られている。政権の一員なので内部情報に詳しく影響力を行使しやすい。オバマが進言に耳を貸す可能性も高い。

 難点は、保守派の格好の標的になりそうなこと。彼はローマーと共に、オバマの大型景気刺激策で失業率は8%以下に収まると言ってしまった。彼を指名するとすれば、政権の既存路線をさらに強調する勇気ある選択になるだろう。

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