最新記事

アメリカ社会

おデブな子供の幸せ探して

ミシェル・オバマが立ち上げた子供の肥満撲滅作戦は、肥満児の自尊心を傷つけ、人々の偏見を助長するだけ

2010年7月13日(火)13時25分
レスリー・キンゼル

自己嫌悪を越えて ダイエットを繰り返した末に気付いたことがある Courtesy Lesley Kinzel

 9歳のときに書き始めた日記をめくると、最初のページにこうある。「私は9歳(もうすぐ10歳)で太ってる。47キロよ!」

「私は9歳(もうすぐ10歳)で、一角獣が好き」でもなければ、「私は9歳(もうすぐ10歳)で、パパと犬のプリシラとフロリダに住んでる」でもない(どれも事実なのに)。10歳足らずの子供が既に、太っていることこそ自分の最大の属性だと知っていたのだ。

 だから私は、ミシェル・オバマが始めた子供の肥満撲滅キャンペーンについて見聞きするたびに、胸が締め付けられる。この手の動きは必ず肥満児への攻撃につながるからだ。肥満児は、アメリカに広がる偏見に抵抗すべく必死で戦っている。ファーストレディーが主導する活動によって、これ以上の罰を受ける理由はない。

 小児科医によって肥満の宣告を受ける以前の私は、活発で運動好きな子供だった。だが成長するにつれて、「デブは運動が苦手」という世間のイメージを知った。肥満児がスポーツをするとからかわれるから、やめてしまった。

 当時も今も肥満のせいで健康を害したことはないが、私は小学生でダイエットを始めた。食べる物を注意深く選び、「いい」食べ物と「悪い」食べ物をリストアップ。食事療法士による厳密な食事指導も受けた。

 数年後にはさまざまな減量プログラムにも手を出すようになった。食べていい食品はますます減り、代わりにロメインレタスのバルサミコ酢あえのようにカロリーも栄養もない食品がリストに加わった。

 ダイエットを始めると、確かに最初は一気に体重が減る。でも10キロほど痩せたところで、体重の減少は止まり、何をしてもそれ以上は痩せられない。諦めて通常の食生活に戻ると、体重はリバウンドし、以前よりさらに増加。すぐに再びダイエットを始め、また失敗するという繰り返しだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国当局、エヌビディア H20半導体の使用回避を国

ワールド

豪中銀、全会一致で予想通り利下げ 一段の緩和には慎

ビジネス

マスク氏のxAI、アップルに法的措置取る方針 アプ

ワールド

米国でさらに1000万人が無保険に、大型減税成立で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    【徹底解説】エプスタイン事件とは何なのか?...トラ…
  • 6
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 7
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 8
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 9
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 10
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 8
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中