最新記事

結婚

「男=浮気」はもう卒業

有名人の不倫スキャンダルが続出する一方、若者の間ではマイホームパパが増加している

2010年5月19日(水)14時47分
ジュリア・ベアード(社会問題担当)

家族が一番  若いパパが子供と過ごす時間は以前の2倍に Lori Adamski Peek-Workbook Stock/Getty Images

「人と神の間において不義は問題だが、人とその妻の間では何の意味も持たない」。イギリスの文学者サミュエル・ジョンソンはそう言った。賢い妻は夫の不義になど悩まない──

 ご冗談を。そんなのは、女性がYouTubeやゴルフクラブという「武器」を手にする前のお話だ。ジョンソンが活躍した18世紀後半、男の浮気は当たり前だっただけでなく、社会的にも容認されていた。回顧録や妻の親族宛ての手紙で、売春婦との素敵な一夜を自慢する者さえいた。

 現代では浮気は明らかに「悪」だ。06年に米調査機関ピュー・リサーチセンターがアメリカで行った調査では、不倫を道徳的な過ちと見なす回答者が9割に上った。

 歴史学者で『結婚、ある歴史的考察』の著者であるステファニー・クーンツによれば、不倫を非とする傾向は過去1世紀の間に飛躍的に強まった。男性の不貞行為の減少を示す証拠もあるという。男性相手の売春が盛んだった18世紀後半、中流階級の淑女の間では性病罹患率が高かった。

 果たして本当にパンツをみだりに脱がない男性が増えているのか。それとも女性が男性並みになっただけなのか。

 不倫というテーマは正確な記録を集めにくい。大抵の人が嘘をつくため、データは当てにならない。70年代に比べて不倫の件数が減ったという研究がある一方で、女性の間では不倫が増えているとの報告も複数ある。

 とはいえ、ここで言いたいのは別のことだ。昨今ゴシップ雑誌をにぎわしている浮気者の男たちは、「今も昔も男は変わらない」という固定観念に拍車を掛けているのではないか。

 この数カ月間、アメリカでは妻に嘘をつきまくる夫のニュースばかり。父親でもある彼らは妻が癌と闘病したり仕事に励んだり、子供の面倒を見ている間にストリッパーといちゃつき、ポルノ女優に露骨な内容の携帯メールを送り、愛人と子供をつくる。

 プロゴルファーのタイガー・ウッズや政治家のジョン・エドワーズ、女優のサンドラ・ブロックの夫ジェシー・ジェームズのような男は「典型例」だと言われる。男はろくでなし、男はいつだって家庭より自分の欲望を優先する、と。

わが子といたがる男たち

 だが、NPO(非営利組織)の現代家族評議会が4月の年次総会に合わせて行った家族調査では、意外な事実が判明した。実は、男性の態度は徐々にだが驚くほど変化している。

 第1に、男性はわが子のためにより多くの時間を使うようになった。28歳以下の父親が平日に子供と一緒に過ごす時間は平均4・3時間。77年当時の同世代の男性のほぼ2倍だ。NPOの家族・労働研究所によると、こうした若い父親が子供の世話をする時間は29〜42歳の年齢層の母親よりも長い。

 第2に、いまだに家事の大半は女性がしているものの、男性も掃除や皿洗いにずっと積極的になっている。とりわけ学歴が低い男性がそうだ。オックスフォード大学の調査によれば、大卒男性が家事をする割合は65〜03年の間に33%増加。高校中退の男性の場合は100%増えた。この25年間、離婚率が下がり続けているのはそのおかげかもしれない。

 残念ながら、負担を分かち合えば、悩みも分かち合うことになる。驚いたことに、今や既婚男性は既婚女性より仕事と家庭の両立に悩んでいるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

クグラーFRB理事が退任、8日付 来年1月の任期満

ビジネス

NY外為市場=ドル急落、147円台 雇用統計軟調で

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ542ドル安 雇用統計軟調

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中