最新記事
サウスポー

左利きは本当にクリエイティブ...? 「天才神話」に科学が下した冷静な結論

Lefty Myths Debunked

2025年7月25日(金)17時30分
メリッサ・フルール・アフシャル(本誌記者)

分かりやすさを好む心理

しかし、現実はそう単純ではないようだ。

カササントらは、利き手と創造性の関係をテーマにした1900年以降の論文1000点近くを分析した。このうち、科学的厳密性の基準を満たしていると評価できるものは17件にとどまった。


それらの研究によれば、発散的思考のテストの成績に利き手は影響しないように見えた。というより、右利きのほうが好成績だったケースもあった。

さらにカササントらは、770以上の職種について1万2000人近くのアメリカ人のデータを分析した。すると、芸術や音楽の分野でこそ左利きの割合が多かったものの、創造性が求められる職種全般では、むしろ左利きの割合が相対的に少なかった。

カササントの見方によれば、左利き神話には左利きを特別視する発想が影響している。左利きの人は数が少なく、そもそも創造性に富んだ天才も少ないので、左利きの人は創造性豊富なのだろうという推測が働くというのだ。

ロンドンの精神科医ドクター・モスンは、ポール・マッカートニーやジミ・ヘンドリックスなど、左利きのクリエーティブな有名人の影響を指摘する。

一方で、モスンによれば要因はそれだけではない。左利き神話の根底には、人々が物事を単純化して理解しようとする傾向があると言う。「実際には、創造性は環境、教育、文化、性格など、さまざまな要素の影響を受ける。

ステレオタイプ的な思考は、珍しい現象を分かりやすく説明できる法則を欲する心理によって生まれることが多い。けれども、いつも真実はそれほど単純ではない」

Reference

Morgan, O., Zhao, S., & Casasanto, D. (2025). Handedness and creativity: Facts and fictions. Psychonomic Bulletin & Review. https://doi.org/10.3758/s13423-025-02717-2

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英CPI、11月は前年比+3.2%に鈍化 3月以来

ワールド

中国訪日客、11月は3.0%増に伸び大幅鈍化 長官

ビジネス

MUFG、印ノンバンクに40億ドル以上出資へ=関係

ビジネス

日経平均は反発、米雇用統計通過で安心感 AI関連も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中