最新記事
サイエンス

出産直後の「カンガルーケア」に長期的な効果はなかった【最新研究】

Skin-to-Skin Contact After Birth Does Not Boost Long-Term Development

2025年6月12日(木)13時35分
ダニエラ・グレイ
新生児

Bricolage-shutterstock

<母親と新生児の最初のふれあいに関する、最新の臨床試験結果について>

母親と新生児の最初のふれあいには、長続きする効果があると考えられてきた。しかし、その効果の範囲に疑問を投げかける最新研究が発表された。

医学誌『JAMA Network Open』に発表されたランダム化臨床試験によると、出産直後に分娩室で行われた母子間の「カンガルーケア(SSC:Skin-to-Skin Contact)」は、2〜3歳時点での神経発達に有意な影響を与えなかったという。

ノルウェー科学技術大学のライラ・クリストファーセン(Laila Kristoffersen)准教授は本誌に対し、次のように語る。


 

「本研究の目的は、出生直後という極めて重要なタイミングでカンガルーケア(SSC)を実施することにより、子どもの発達に長期的な効果があるかを検証することでした。

出産後の数時間は母子の絆が深まる非常にデリケートな時間帯です。しかし早産の場合、赤ちゃんがすぐにNICU(新生児集中治療室)へ運ばれて保育器に入ることになり、母子が長時間引き離されることも多いのです」

今回の実験では、妊娠30週前後で生まれた早産児108人を対象に、母親とすぐにカンガルーケアを行ったグループ(カンガルーケア(SSC)群)と、標準的なケアを受けたグループ(標準ケア群)にランダムに分類。その後、86人の子どもを2〜3歳時点で追跡し、発達指標を評価した。

その結果、認知発達に関しては「カンガルーケア(SSC)群」と「標準ケア群」の間に有意差は見られなかったという。

評価には乳幼児発達の標準指標である「ベイリー乳幼児発達検査(BSID-III/ベイリースリー)」が用いられている。また両グループの約半数が、発達の遅れを伴うリスクを抱えていたが、これは想定される範囲内の結果とされる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中