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恐竜が「がん治療」のカギを握っている...「赤血球に似た構造」に医師が着目する理由とは?【最新研究】

How Dinosaurs Could Help Us Fight Cancer

2025年6月9日(月)14時50分
リディア・パトリック

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化石化した赤血球ににた構造のSEM(走査電子顕微鏡)画像。表面形状と密度コントラストが見られる Angela Ruskin University/Angela Ruskin University

なぜ「タンパク質」が重要なのか

通常、DNA(デオキシリボ核酸)は時間とともに分解されていく。

一方で、特に骨のような硬い組織に含まれるタンパク質は長く残ることもあるとして、ステビング教授は次のように述べる。


 

「骨のような石灰化組織に含まれるタンパク質は、DNAよりも安定性が高く、劣化や汚染の影響も受けにくいのです。これが古代の病気の研究素材として理想的である理由です」

こうして化石化した軟組織を通して古代の病気を調べることは、がんの進化的な背景や種ごとの生存戦略と疾患との関係性を明らかにする手立てとなる。

実際、テルマトサウルスの化石からは「エナメル上皮腫(ameloblastoma)」など腫瘍の痕跡も確認されており、がんが太古の生態系において繰り返し発生していた可能性を示唆している。

今後、「古代プロテオミクス(パレオプロテオミクス/paleoproteomic)」と呼ばれる技術が発展すれば、こうした軟組織から古代のタンパク質や腫瘍抑制の経路を検出する手法もより精度が上がるという。

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